仙台赤十字病医誌 Vol.19， No.1， 55-58， 2010

症例報告

腹腔鏡下脾臓摘出時に判明した脾過誤腫の1例

仙台赤十字病院　外科

深町　　伸　　中川　国利　　小村　俊博　　塚本　信和
小林　照忠　　遠藤　公人　　鈴木　幸正

A Case of Splenic Hamartoma Revealed at Laparoscopic Splenectomy

Department of Surgery， Japanese Red Cross Sendai Hospital

Shin FUKAMACHI, Kunitoshi NAKAGAWA, Toshihiro KOMURA, Nobukazu TUKAMOTO,
Terutada KOBAYASHI, Kojin ENDO and Yukimasa SUZUKI

要旨

比較的まれな疾患である脾過誤腫の1例を経験したので報告する。症例は73歳の女性で，特発性血小板減少性紫斑症に対する脾臓摘出を目的に紹介された。CT検査では脾上極に4×3cm大，境界明瞭な腫瘤を認め，造影では内部は不均一であった。以上から脾腫瘍を伴う特発性血小板減少性紫斑症と術前診断し，腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した。脾腫瘍の病理組織検査では脾洞とリンパ濾胞の増殖を認め，混合型の脾過誤腫と診断された。脾臓摘出術後はステロイドを漸減して終了したが，術後8ヵ月現在，血小板数は正常値を維持している。脾過誤腫は特異な臨床症状はなく，健診や他疾患の精査時に偶然に診断されることが多い。また悪性疾患との鑑別診断が困難なため脾臓摘出術が施行されることが多く，腹腔鏡下脾臓摘出術は低侵襲と安全性から推奨される術式と考える。

Key words:脾過誤腫，特発性血小板減少性紫斑症，腹腔鏡下脾臓摘出術