仙台赤十字病医誌 Vol.19, No.1, 31-35, 2010

原著

妊娠時における急性虫垂炎症例の検討

仙台赤十字病院　外科

中川　国利　　小村　俊博　　深町　　伸
塚本　信和　　小林　照忠　　遠藤　公人
鈴木　幸正　　桃野　　哲

Acute Appendicitis in Pregnancy

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Kunitoshi NAKAGAWA, Toshihiro KOMURA, Shin FUKAMACHI, Nobukazu TUKAMOTO,
Terutada KOBAYASHI, Kojin ENDO, Yukimasa SUZUKI and Satoshi MOMONO

要旨

過去34年間に，妊娠時における急性虫垂炎手術症例48例を経験した。年齢は平均28.3歳で，妊娠時期は前期18例，中期24例，後期6例であった。主訴は全例が右側腹部痛および圧痛で，筋性防御を28例で認めた。37℃以上の発熱は33例，白血球数10,000/mm³以上が39例で，超音波検査で虫垂炎と診断できたのは17例のみであった。虫垂炎の炎症程度は，カタル性15例，蜂窩織炎性19例，壊疽性14例であった。虫垂穿孔を10例で認め，汎発性腹膜炎2例，限局性腹膜炎8例であった。術後合併症として，母体で腹腔内膿瘍を2例，胎児では早産および流産を各1例認めた。妊娠時における虫垂炎の診断はいまだ困難であり，早産や流産などの悪影響を胎児に及ぼす危険性がある。したがって産科医と連携しより早期の診断・治療に努めると共に，母体と胎児への影響を配慮した慎重なる周術期管理を行う必要がある。

Key words:妊娠，妊婦，急性虫垂炎，虫垂切除