仙台赤十字病医誌　Vol. 18, No. 1, 85-88, 2009

症例報告

腹腔鏡補助下に修復した再発鼠径ヘルニア嵌頓の1例

仙台赤十字病院　外科

小池麻理子　　中川　国利　　藪内　伸一
小林　照忠　　遠藤　公人　　鈴木　幸正

A Case of Recurrent Incarcerated Inguinal Hernia Treated
with Laparoassisted Hernioplasty

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Mariko KOIKE, Kunitoshi NAKAGAWA, Shinichi YABUUCHI, Terutada KOBAYASHI,
Kojin ENDO and Yukimasa SUZUKI

要旨

S状結腸が嵌頓した鼠径ヘルニア再発症例に対して，腹腔鏡補助下に整復すると共にヘルニア修復術を施行したので報告する。症例は70歳の男性で，幼児期に左鼠径ヘルニア修復術を，15年前に再発にて修復術を受けた。左鼠径部腫大を主訴とし，CT検査では左鼠径部に腸管内ガス像を認めたことから嵌頓を伴う再発鼠径ヘルニアと術前診断した。腹腔鏡下に観察すると，左内側臍ヒダの内側にS状結腸がRichter型に嵌入していた。そこで体外から用手的に圧迫すると共に，把持鉗子を用いて結腸を腹腔内に還納した。結腸に血流障害がないことを確認し，体外からヘルニア嚢を剥離してMesh plugを挿入した。再発鼠径ヘルニア嵌頓例に対する腹腔鏡下手術は，全身麻酔さらには特殊な器具や手技を要する。しかし，再発部位の同定，嵌頓した腸管の還納，腸管の血流状態やヘルニアの修復状態を確認でき，腹腔鏡下手術を施行する意義は大きいと思われる。

Key words: 腹腔鏡補助下鼠径ヘルニア修復術，鼠径ヘルニア再発，鼠径ヘルニア嵌頓，Mesh plug