仙台赤十字病医誌　Vol. 18, No. 1, 49-55, 2009

原著

小児インフルエンザ菌性髄膜炎に対するエダラボンの使用経験

仙台赤十字病院　小児科

守谷　充司　　田中　佳子　　千葉　　靖　
大原朋一郎　　永野千代子

A Case Report of Hemophilus influenzae Meningitis
Treated with Edaravone

Department of Pediatrics, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Mitsuji MORIYA, Yoshiko TANAKA, Yasushi CHIBA,
Tomoichiro OHARA and Chiyoko NAGANO

要旨

症例は10ヶ月男児。発熱，意識障害，左上下肢間代性痙攣により発症し，血液，髄液，鼻汁から全てインフルエンザ菌(Hemophilus influenzae: Hi) が検出され，Hiによる敗血症/化膿性髄膜炎と診断した。Panipenem/betamipron+ceftriaxone，デキサメタゾン，ガンマグロブリンなどの投与により解熱，炎症所見も急速に改善したにも関わらず，その後右顔面と右上肢の間代性痙攣が持続し，MRIにて左側前頭，側頭，頭頂領域皮質下白質に異常信号域を認めた。フリーラジカル消去作用を有するエダラボンを計14日間併用し，その後右手の微細運動機能障害を残す以外順調に回復した。化膿性髄膜炎に際してフリーラジカルの関与が示唆されており，この病態に対するエダラボンの使用報告はまだないが，重篤な神経学的後遺症が懸念される場合には積極的に投与が検討されても良いと考える。

Key words: エダラボン，化膿性髄膜炎，痙攣重積，フリーラジカル