仙台赤十字病医誌　Vol. 18, No. 1, 43-48, 2009

原著

腸膀胱瘻症例の検討

仙台赤十字病院　外科

中川　国利　　小池麻理子　　小村　俊博
藪内　伸一　　小林　照忠　　遠藤　公人
鈴木　幸正

Analysis of Enterovesical Fistulas

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Kunitoshi NAKAGAWA, Mariko KOIKE, Toshihiro KOMURA, Shinichi YABUUCHI,
Terutada KOBAYASHI, Kojin ENDO and Yukimasa SUZUKI

要旨

過去23年間に，腸膀胱瘻症例15例を経験したので報告する。年齢は平均61.5歳で，男性11例，女性4例であった。なお女性はいずれも子宮摘出術の既往歴を有していた。主訴はいずれも糞尿で，病悩期間は3ヶ月以内であった。術前検査では，腹部CT検査やMRI検査では全例で膀胱内に空気を，膀胱鏡検査では糞便を認めた。さらに注腸造影検査や膀胱造影検査などにより，全例で腸膀胱瘻と術前診断した。またその原疾患として，直腸癌6例，S状結腸憩室炎6例，放射線治療3例と診断した。手術は，直腸癌症例では骨盤内臓器全摘術，直腸前方切除術，人工肛門造設術を各2例で施行した。S状結腸憩室炎症例では，全例で結腸切除術を施行した。さらに放射線治療症例では人工肛門造設術2例，回腸空置術1例を施行した。瘻孔部位を含む大腸切除を施行した10例では腸膀胱瘻は治癒し，人工肛門造設術や回腸空置術を施行した他の5例でも症状は改善した。

Key words: 腸膀胱瘻，直腸癌，結腸憩室炎