仙台赤十字病医誌　Vol. 18, No. 1, 33-41, 2009

原著

濃厚赤血球輸血により高カリウム血症の
増悪を来した5例の極低出生体重児の検討

仙台赤十字病院　総合周産期母子医療センター NICU

中江　信義　　下寺佐栄子　　小松　貴紀
三条　雅敏　　千葉　洋夫　　高橋　立子
山田　雅明

Clinical Study of Five Very Low Birth Weight Infants with
Hyperkalemia Exacerbated by Packed Red Blood Cell Transfusion

Department of Neonatal Intensive Care Unit,
Perinatal Medical Center, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Shingi NAKAE, Saeko SHIMODERA, Takanori KOMATSU, Masatoshi SANJO,
Hiroo CHIBA, Ritsuko TAKAHASHI and Masaaki YAMADA

要旨

2001年から2005年までの5年間に，生後早期の濃厚赤血球輸血により全血K値が輸血前後で1 mEq/L以上の上昇を伴う高K血症の増悪を来した極低出生体重児の5例を経験した。5例中3例の超低出生体重児は日齢1までの輸血中に高K血症に由来するAV blockを起こし急変し，その内の1例は症候性動脈管閉鎖遅延による心不全・腎不全で，その他の2例は肺出血と重篤な脳室内出血を併発し死亡した。高K血症から離脱できたのは2例のみで，その内の超低出生体重児の1例は日齢229に18トリソミーに肝腫瘍を合併し死亡した。生存退院は極低出生体重児の1例のみであり，その予後は極めて不良であった。生後早期の高K血症の管理において，心伝導障害を起こさないように管理することが重要で，そのためには全血K値7 mEq/L前後での積極的なGI療法の施行と輸血製剤上清に含まれるカリウムの負荷を最小限，かつ，緩徐にする輸血方法，および製剤処理方法の必要性を痛感した。

Key words: 極低出生体重児，濃厚赤血球輸血，高カリウム血症，心伝導障害，GI療法