仙台赤十字病医誌　Vol. 17, No. 1, 89-93, 2008

症例報告

永久留置型尿道ステント (メモサーム®) 留置例に発生した膀胱癌の2例

仙台赤十字病院　泌尿器科

佐々木光晴　　太田　章三

Two Cases of Bladder Cancer with Permanent Urethral Stent (Memotherm®)

Department of Urology, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Mitsuharu SASAKI and Shozo OTA

要旨

前立腺肥大症に対し，永久留置型ステントを留置した例で，膀胱癌を発症した2例を経験した。(症例1) 92歳男性。87歳時，前立腺肥大症による尿閉にて紹介された。高齢，肺機能，心機能の評価から経尿道的前立腺切除術は危険と考え尿道ステントを留置した。92歳時，血尿を主訴に受診した。超音波検査，膀胱鏡検査にて膀胱癌の診断となり経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行した。(症例2) 81歳男性。たびたび尿閉となり経尿道的前立腺切除術施行予定であったが，脳梗塞のため手術を中止した。78歳時，再び尿閉となり尿道ステントを留置した。81歳時，血尿を主訴に受診した。超音波検査，膀胱鏡検査にて膀胱癌の診断となり経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行した。永久留置型ステントは，長期にわたりスムーズな排尿状態を得ることができ，かつ留置後も経尿道的手術を安全に施行することができる有益な治療法であると考えられた。

Key words: 永久留置型尿道ステント，膀胱癌，前立腺肥大症