仙台赤十字病医誌　Vol. 17, No. 1, 27-33, 2008

原著

虫垂粘液嚢腫症例の検討

仙台赤十字病院　外科

中川　国利　　小村　俊博　　藪内　伸一
小林　照忠　　遠藤　公人　　鈴木　幸正

Clinical Study of Appendiceal Mucocele

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Kunitoshi NAKAGAWA, Toshihiro KOMURA, Shinichi YABUUCHI,
Terutada KOBAYASHI, Kojin ENDO and Yukimasa SUZUKI

要旨

過去18年間に，虫垂粘液嚢腫14例を経験したので報告する。年齢は平均61.4歳で，男性7例，女性7例であった。主訴は右下腹部痛が10例と最も多く，うち4例は急性虫垂炎と術前診断して緊急手術を施行した。他の10例中7例は種々の画像検査から，虫垂粘液嚢腫と術前診断した。また1例は虫垂癌と術前診断したが，残りの2例は他疾患の術中に診断した。手術所見は，全例で虫垂は棍棒状に腫大し，また腸重積3例，虫垂穿孔2例，7×6 cm大の虫垂腫瘍1例を認めた。手術術式は虫垂切除術6例，虫垂を含む盲腸部分切除術4例，回盲部切除術3例および結腸右半切除術1例であった。なお最近の4例は手術侵襲を少なくするために，腹腔鏡下に施行した。組織学的には粘液嚢胞腺腫9例，粘膜過形成4例および粘液嚢胞腺癌1例であった。また杯細胞カルチノイドおよび仮性憩室を各1例で併存していた。術中および術後に偶発症はなく，術後平均10年3カ月が経過したが，腹膜偽粘液腫や癌再発は認めていない。

Key words: 虫垂粘液嚢腫，虫垂粘膜過形成，虫垂粘液嚢胞腺腫，虫垂粘液嚢胞腺癌，腹腔鏡下手術