仙台赤十字病医誌　Vol. 17, No. 1, 21-26, 2008

原著

胃切除既往例における腹腔鏡下胆嚢摘出術

仙台赤十字病院　外科

中川　国利　　小村　俊博　　藪内　伸一
小林　照忠　　遠藤　公人　　鈴木　幸正

Laparoscopic Cholecystectomy in Patients with Previous Gastrectomy

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Kunitoshi NAKAGAWA, Toshihiro KOMURA, Shinichi YABUUCHI,
Terutada KOBAYASHI, Kojin ENDO and Yukimasa SUZUKI

要旨

胃切除既往歴を有する胆嚢結石症例80例に対して，腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。胃切除の原疾患は，胃癌42例および胃・十二指腸潰瘍38例で，胃切除から腹腔鏡下胆嚢摘出術までの期間は，平均17年3カ月であった。また胆嚢切石術の既往を3例で有し，急性胆嚢炎を24例で合併していた。術中偶発症は1例で最初のトロカール挿入時に腹膜に癒着した小腸を損傷し，挿入創を延長して腸管を縫合した。また3例は既往手術による癒着剥離困難で，2例は急性胆嚢炎による癒着剥離困難で開腹移行した。さらに術中に胆嚢癌と判明した2例でも開腹移行し，開腹移行例は計8例（10.0%）であった。術後偶発症はとくになく，腹腔鏡下に手術を施行しえた症例では手術翌日から経口摂取し，早期の退院や社会復帰が可能であった。胃切除既往例に対しても，手術侵襲が少ない腹腔鏡下手術を試みる意義があると思われた。

Key words: 胃切除既往，胆嚢結石症，腹腔鏡下胆嚢摘出術