仙台赤十字病医誌　Vol. 16, No. 1, 47-53, 2007

症例報告

MRワクチン接種後に発症した川崎病の2例

仙台赤十字病院　小児科，八木山こどもクリニック^*

大場　　泉　　　永野千代子　　　守谷　充司
小林泰一郎　　　鈴木　亜理　　　田中　佳子
千葉　　靖　　　速水　俊三^*

Two Cases of Kawasaki Disease Following MR Vaccination

Department of Pediatrics, Japanese Red Cross Sendai Hospital,
and ^*Yagiyama Children's Clinic

Izumi OHBA, Chiyoko NAGANO, Mitsuji MORIYA,
Taiichiro KOBAYASHI, Ari SUZUKI, Yoshiko TANAKA,
Yasushi CHIBA and Shunzo HAYAMIZU^*

要旨

平成18年4月から日本において麻疹風疹2種混合生ワクチン（MRワクチン）接種が開始されたが，我々はMRワクチン接種後に発症した川崎病を2例（いずれも1歳2ヶ月児）経験した。1例目は接種後10日目に発症し，川崎病主徴5/6を満たし，ウリナスタチンとアスピリン治療により有熱期間7日間で解熱した。発症時に抗麻疹ウイルスIgM抗体陽性であり，その後麻疹風疹とも抗ウイルスIgG抗体陽性へ転じた。2例目は接種後2日目に発症し，川崎病主徴6/6全てを満たし第4病日から大量ガンマグロブリン投与が開始されたが不応で，計6 g/kgの大量ガンマグロブリン，ステロイド，ウリナスタチンを併用し，合計有熱期間が20日間に及んで解熱した。2例とも冠動脈病変を示した。川崎病の病態はいまだ不明であるが，MRワクチン接種が宿主の免疫応答の異常を招来して川崎病の発症に関わった可能性が否定できない。

Key words: 川崎病，麻疹，風疹，MRワクチン，小児