仙台赤十字病医誌　Vol. 16, No. 1, 35-39, 2007

症例報告

虫垂Neuronal hyperplasiaを認めた慢性腹痛の2例

仙台赤十字病院　小児外科

遠藤　尚文　　　神山　隆道

Two Cases of Neuronal Hyperplasia in Appendix
with Chronic Abdominal Pain

Department of pediatric Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Naobumi ENDO and Takamichi KAMIYAMA

要旨

3ヶ月以上にわたり反復する右下腹部痛を訴えて来院し，慢性腹痛の診断基準を満たした患児2例に対して腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。術前所見では急性炎症の所見は無く，術中所見でも虫垂に炎症は認めず，周囲組織の癒着やその他の病変等の異常は認められなかった。切除虫垂の病理組織学的検査では2症例とも一般染色では虫垂炎としての炎症所見は無かったが，S-100蛋白，Neuron specific Enoraseの酵素組織学的染色で粘膜層から筋層間神経叢にかけての神経線維増生が認められ，Neuronal hyperplasiaと診断された。神経線維増殖はneuropeptideを介して疼痛に関与している可能性が指摘されており，虫垂切除後に腹痛は改善した。

Key words: chronic abdominal pain, laparoscopic appendectomy, neuronal hyperplasia