仙台赤十字病医誌　Vol. 16, No. 1, 29-34, 2007

症例報告

イレウスを発症した腸結核の1例

仙台赤十字病院　外科，
呼吸器内科^*

下寺佐栄子　　中川　国利　　藪内　伸一
村上　泰介　　遠藤　公人　　鈴木　幸正
清水川　稔^*

A Case of Intestinal Tuberculosis with Ileus

Department of Surgery,
^*Department of Respiratory Medicine, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Saeko SHIMODERA, Kunitoshi NAKAGAWA, Shinichi YABUUCHI,
Yasusuke MURAKAMI, Kojin ENDO, Yukimasa SUZUKI
and Minoru SHIMIZUKAWA^*

要旨

イレウスを発症した腸結核例に対し，腹腔鏡補助下に狭窄部の小腸切除術を施行したので報告する。症例は76歳の男性で，近医にイレウスで入院し，腸結核および肺結核と診断された。当院に転院し，結核に対する化学療法を行うと共に，イレウスに対しては保存的療法を行った。2ヶ月半経過してもイレウスは改善せず，急性胆嚢炎も生じたため手術を施行した。腹腔鏡下に観察すると，多発性小結節や腸癒着および胆嚢腫大や壁肥厚を認めたが，腹腔鏡下に胆嚢を摘出した。さらに小腸狭窄部の直上で小開腹し，病巣腸管の切除および膿瘍の切開ドレナージを施行した。術後に抗結核療法を再開し，手術4ヶ月後に退院した。本例では関節リウマチ治療剤として使われたステロイドやTNF阻害剤のEtanerceptが，結核を惹起した可能性がある。また腹腔鏡下手術は低侵襲であり，大変有用な術式であった。

Key words: 腸結核，結核性腹膜炎，イレウス，腹腔鏡補助下小腸切除術，腹腔鏡下胆嚢摘出術