仙台赤十字病医誌　Vol. 15, No. 1, 109-113, 2006

症例報告

脳結核腫を含み全身性播種（粟粒結核，腎結核，髄膜炎）を合併したが，
救命しえた一例

仙台赤十字病院　呼吸器科，
神経内科^*

三木　　誠　　石川　哲子　　岡山　　博
清水川　稔　　佐藤　正俊　　佐久間博明^*

Disseminated Pulmonary Cryptococcosis after Bronchoscopic Examination

Department of Respiratory Medicine,
^*Department of Neurology, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Makoto MIKI, Tetsuko ISHIKAWA, Hiroshi OKAYAMA,
Minoru SHIMIZUKAWA, Masatoshi SATOH and Hiroaki SAKUMA^*

要旨

症例は59歳男性。平成15年8月より，食思不振，全身倦怠感，体重減少，血尿が出現し，8月20日前医へ入院。尿ダイレクトTB検査陽性より腎結核が判明し，8月21日当院へ転院。胸部CTにて両肺にびまん性小粒状影を認め，喀痰塗抹検査Gaffky 1号から，粟粒結核の診断が確定し，抗結核剤による治療を開始した。9月3日血小板減少を認め，SM以外の抗結核剤を全て中止し，血小板輸血にて治療を行った。9月13日頃より幻視・見当識障害が出現し，脳MRIで両側の小脳半球を中心に多発腫瘤陰影を認めた。髄液の細胞数・蛋白の増加も認められ，脳結核および結核性髄膜炎と診断し，EB, PZA, INHを順次追加し，徐々に軽快した。
　脳結核は稀であり，予後不良な疾患である。本症例は，治療に困難を極めたが，最終的には結核の治癒に至った。粟粒結核患者に神経精神症状が出現した場合，脳結核を疑って検査を行うことが重要であると考察された。

Key words: 脳結核腫，結核性髄膜炎，粟粒結核，腎結核