仙台赤十字病医誌 Vol. 15, No. 1, 77-80, 2006

症例報告

保存的治療が可能であった肝嚢胞破裂の1例

仙台赤十字病院 外科,
総合内科*

大場  泉  中川 国利  鈴木 幸正
遠藤 公人  村上 泰介  白相  悟
真所 弘一*

A Case of Conservative Treatment for the Ruptured Hepatic Cyst

Department of Surgery,
*Department of General Internal Medicine, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Izumi OBA, Kunitoshi NAKAGAWA, Yukimasa SUZUKI,
Kojin ENDO, Yasusuke MURAKAMI, Satoru SHIRASO
and Koichi MADOKORO*

要旨

保存的治療が可能であった肝嚢胞破裂例を経験したので報告する。症例は89歳の女性で,2年前右上腹部に腫瘤を触れて来院した。画像検査では肝右葉に,27×19×17 cm大の嚢胞を認めた。高齢で重度の認知症を伴うため,経過を観察していた。突然の発熱と呼吸困難を主訴として来院したが,腹部打撲の既往はなく腹痛も軽度であった。腹部は全体に膨満し,軟で,右上腹部に腫瘤は触れなかった。腹部CT検査で肝嚢胞被膜の断裂と大量の腹水を認め,肝嚢胞破裂と診断した。腹腔穿刺で約1 lの漿液性腹水が吸引された。全身状態は安定していたため,保存的に経過を観察した。肝嚢胞破裂1カ月後のCT検査では肝嚢胞は再形成され,腹水はほぼ消失していた。肝嚢胞破裂例に対しては緊急手術が行われることが多いが,全身状態と腹水の性状によっては保存的治療も可能であると思われた。


Key words: 肝嚢胞,破裂,保存的療法