仙台赤十字病医誌 Vol. 14, No. 1, 51-54, 2005

症例報告

検診で発見され,気管支鏡検査後に播種した肺クリプトコッカス症の1例

仙台赤十字病院 呼吸器科

三木  誠  石川 哲子  岡山  博

Disseminated Pulmonary Cryptococcosis after Bronchoscopic Examination

Department of Respiratory Medicine, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Makoto MIKI, Tetsuko ISHIKAWA and Hiroshi OKAYAMA

要旨

症例は64歳男性。検診胸部X線写真で右中肺野の結節陰影を指摘され,肺癌を疑い気管支鏡を施行した。擦過細胞診はClass II,その他の細菌学的検査もすべて陰性であった。検査後,胸部CTにて両肺に播種を,一部に空洞陰影を認めたため感染症を疑い精査を行った結果,血清クリプトコッカス抗原が陽性であり,肺クリプトコッカス症と診断した。
 Cryptococcus neoformansは肺に初感染巣を作るが,健康人では局所での肉芽腫形成にとどまり,無症候性のまま自然治癒する。しかし,宿主の免疫能が低下すると感染巣が徐々に増大し,時に血行性に播種する。本症例は,免疫が正常であるにもかかわらず,気管支鏡検査後に播種を認めた。その後,Itraconazole 100〜300 mg/日による治療を行い,陰影は縮小しつつある。全身に播種した場合,髄膜炎の合併の危険性があるため,気管支鏡検査後には注意を要すると考察された。


Key words: クリプトコッカス,結節陰影,空洞陰影,血清クリプトコッカス抗原