仙台赤十字病医誌　Vol. 14, No. 1, 39-43, 2005

症例報告

地理的失見当を呈した左頭頂葉-後頭葉梗塞の1例

仙台赤十字病院　神経内科
広南病院　神経内科^*
東北大学大学院医学系研究科高次機能障害学^**

佐久間博明　　大場　　泉　　市川　信通
望月るり子^*　　鈴木　匡子^**

A Case of Topographical Disorientation Following a Left
Parieto-Occipital Lobe Infarction

Department of Neurology, Japanese Red Cross Sendai Hospital
^*Department of Neurology, Kohnan Hospital
^**Department of Behavioral Neurology and Cognitive Neuroscience,
Tohoku University Graduate School of Medicine

Hiroaki SAKUMA，Izumi OHBA，Nobumichi ICHIKAWA，
Ruriko MOCHIZUKI^* and Kyoko SUZUKI^**

要旨

右利きの72歳の男性で，左頭頂葉-後頭葉内側面の梗塞により地理的失見当の中の道順障害を呈した症例を報告した。街並失認ではなく，見慣れた場所の風景や街並の認知は可能であったが，一度に見渡せない場所では容易に道に迷うという典型的な症状を呈した。軽度の失書を伴ったため，言語機能の優位性は左にあると考えられたが，優位半球の病巣にともなう道順障害の報告は少なく，考察を加えて報告した。

Key words: 地理的失見当，道順障害，左頭頂-後頭葉