仙台赤十字病医誌 Vol. 14, No. 1, 3-11, 2005

論説

米国式病院病理制度の導入に伴う問題点
―― 東北地方における病理医不足について ――

東北大学名誉教授

笹野 伸昭

Problems of Developing into the American System of Hospital Pathology :
A Review Emphasizing Shortage of Pathologists in Tohoku District

Professor Emeritus,Tohoku University

Nobuaki SASANO

要旨

わが国の近代医学史において,臨床医学の実地で病理学の役割が著しく増大したことには,米国式の病院病理医制度の導入に負うところが大きい。本稿はこの問題に取り組んだ者の一人である著者の活動の回顧と現状における問題点の展望である。米国屈指の大病院であるマサチューセッツ総合病院で得た経験は,その10年後に日本で最初の国立大学病理部長となって,13年に亘る在任の期間中でも十分に生かしきれなかった。日本では病院病理部が標榜科として認められず,基礎の教授が部長を兼任しなければならない。病理医不足は医師不足にもつながり,特に東北地方で深刻な問題である。これの解決法として,地域病院の合併による規模拡大やネットワークなど受け入れ体制の整備,テレパソロジー導入に伴う障害とその打開策を論じた。また将来に向けては,医学生に対する臨床病理学の啓発,一般社会における病理医認識の普及などをとりあげた。


Key words: 病院病理部,病理医不足,地域病院合併,病院ネットワーク,病理医認識の普及