仙台赤十字病医誌 Vol. 13, No. 1, 67-71, 2004
症例報告
Helicobacter pylori除菌により消失した
多発性胃過形成性ポリープの2例
仙台赤十字病院 内科
検査部*
真所 弘一 中野渡 進* 今野由美子*
高橋 幸夫* 大川 郁子*
Disappearance of Multiple Hyperplastic Polyps in the Stomach
after Eradication of Helicobacter pylori, Report of 2 Cases
Department of Internal Medicine
*Division of clinical laboratory, Japanese Red Cross Sendai Hospital
Koichi MADOKORO, Susumu NAKANOWATARI*, Yumiko KONNO*
Yukio TAKAHASHI* and Ikuko OOKAWA*
要旨
症例(1)は50歳の女性。市民検診の胃X線検査で多発性胃ポリープを指摘され昭和62年12月9日当院で上部消化管内視鏡検査を行った。その結果,胃噴門部,体部および前庭部に山田I型またはII型のポリープを多数認め,数か所からの生検でいずれも腺窩型過形成性ポリープと診断された。症例(2)は60歳の女性。上腹部痛を主訴に当院を受診。平成6年3月3日に上部消化管内視鏡検査を行い胃噴門部,体部および前庭部に山田I型ポリープを多数認め,数か所の生検からいずれも腺窩型過形成性ポリープと診断された。
上記症例(1)および(2)にHelicobacter pylori (以下H. pylori)感染診断を行ったところH. pyloriが陽性であることが確認されたため両症例に除菌療法を施行した。除菌治療終了時から2ヵ月後の感染診断では両症例ともH. pylori陰性となっていた。その後の内視鏡的経過観察で症例(1)では5年後に,症例(2)では1年後にポリープは完全に消失し,さらにその後それぞれ3年および7年経過したが両症例ともにポリープの再発は認められていない。
平成15年2月,日本ヘリコバクター学会は[H. pylori感染の診断と治療のガイドライン]の改訂版を発表した。その中で胃過形成性ポリープは「H. pylori除菌治療が望ましい疾患(Grade B)」として位置付けられており,今後本症例のような過形成性ポリープの根治治療の手段としてH. pylori除菌療法が普及するのではないかと考えられる。
Key words: 胃過形成性ポリープ,H. pylori感染,除菌療法