仙台赤十字病医誌　Vol. 13, No. 1, 61-65, 2004

症例報告

無麻酔下に手術施行した脊髄損傷患者

仙台赤十字病院　麻酔科

遠藤　康弘　　嶋　　　武　　外山　裕章

Three Spinal Cord Injured Patients Who Underwent Surgery
without Anesthesia Safely

Division of Anesthesia, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Yasuhiro ENDO, Takeshi SHIMA and Hiroaki TOYAMA

要旨

慢性脊髄損傷患者3症例計6回の下肢の整形外科手術を，無麻酔にて大きな循環変動なく施行し得た。3例とも神経学的所見としてTh11 またはTh12 以下の温痛覚，触覚がなく，弛緩性麻痺を呈しており，いずれの症例も日常生活にて自律神経反射亢進（autonomic hyperreflexia:AH）の既往はない。高位（T1 以上）脊髄損傷患者，日常生活や手術中にAH発生の既往がある患者，泌尿器手術などAHが発生しやすい部位の手術，ではAH発生のリスクが高く麻酔が必要となる。3症例はこのいずれにも該当せず，さらに触覚がなく，弛緩性麻痺を呈しており，神経損傷が高度でありAH発生が起こりにくい何らかの機序により，無麻酔にて手術が施行し得たと考えられた。

Key words: Autonomic hyperreflexia, 無麻酔，弛緩性麻痺