仙台赤十字病医誌　Vol. 13, No. 1, 55-60, 2004

症例報告

早産を来した妊娠透析患者の1例

仙台赤十字病院　腎センター，
総合周産期母子医療センターMF ICU^*，同NICU^**

木下　康通　　山口　裕二　　松本　正弘
畠山喜恵子　　武山　陽一^*　　中江　信義^**

A Case of Early Delivery in a Patient on Chronic Hemodialysis

Kidney Center,
Department of Maternal Fetal Intensive Care Unit and Delivery Room^*, and Department of Neonatal Intensive Care Unit^**,
Perinatal Medical Center, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Yasumichi KINOSHITA, Yuji YAMAGUCHI, Masahiro MATSUMOTO,
Kieko HATAKEYAMA, Yoichi TAKEYAMA and Shingi NAKAE

要旨

早産を来した妊娠透析患者の一例を経験した．症例は妊娠26週で辺縁前置胎盤からの多量出血で緊急の帝王切開による出産となったが，妊娠20週から産科に入院していたためすみやかに対処でき，輸血は要したが予後は良好であった．又，新生児は超低出生体重児で胎児仮死での出生となったが，新生児集中治療部門で適切な対応ができ，出産予定日の1ヶ月後には元気に退院となった．透析患者の妊娠・出産では，合併症の予防の目的からより生理的な母体環境を提供するために，頻回で十分な透析が必要である．又，早産，低体重児の出産が多いことから，妊娠20週前後でそれらに対応できる医療施設への入院が望ましい．

Key words: 血液透析患者，妊娠・出産