仙台赤十字病医誌　Vol. 13, No. 1, 45-49, 2004

症例報告

右主気管支を閉塞し肺腫瘍が疑われた
炎症性偽腫瘍の1例

仙台赤十字病院　小児内科，
小児外科^*，呼吸器内科^**，
東北大学病院　呼吸器外科^***

平井真紀子　　田中　佳子　　千葉　　靖
永野千代子　　遠藤　尚文^*　　佐野　信行^*　　三木　　誠^**　　遠藤　千顕^***

A Case of Pulmonary Inflammatory Pseudotumor

Department of Pediatrics, ^*Department of Pediatric Surgery,
^**Department of Respiratory Internal Medicine, Japanese Red Cross Sendai Hospital ^***Department of Thoracic Surgery, Institute of Development, Aging, and Cancer, Tohoku University

Makiko HIRAI, Yoshiko TANAKA, Yasushi CHIBA,
Chiyoko NAGANO, Naobumi ENDO*, Nobuyuki SANO^*, Makoto MIKI^** and Chiaki ENDO^***

要旨

症例は9歳男児。発熱，咳，呼吸困難があり肺炎として当院に紹介入院となった。聴診上右肺野の呼吸音減弱に加え，胸部X線写真において右中葉無気肺像があり，気管内異物が疑われたが，胸部CT所見にて右主気管支内に腫瘤が見出され，気管支鏡検査においても右主気管支内腔をほぼ閉塞する円形で表面平滑な腫瘍性病変を認めた。肉眼的所見からは主気管支に好発する気管支悪性腫瘍である粘表皮癌が疑われたが，東北大学病院での気管支鏡下生検の結果，悪性腫瘍は否定的であり，気管支鏡下スネア切除術によって腫瘤は完全に摘出された。病理組織所見から，最終的に炎症性偽腫瘍と診断され，患者はその後無治療で経過観察しているが現在まで再発をみていない。 炎症性偽腫瘍が気管支から発生することは稀であり，その診断の要点を考察する。

Key words: 肺炎症性偽腫瘍，肺炎，粘表皮癌