仙台赤十字病医誌 Vol. 12, No. 1, 95-103, 2003

技術研究

ビタミンE固定化PS膜の生体適合性を含めた臨床評価

仙台赤十字病院 腎センター

寺島 理江  松本 正弘  伊藤 勇一
佐藤  豊  石橋 栄美  山口 裕二
木下 康通

Evaluation of Clinical Performance and Biocompatiblity
of a VitaminE-coated Polysulfone Dialyzer

Kidney Center, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Rie TERASHIMA, Masahiro MATSUMOTO, Yuichi ITO, Yutaka SATO,
Emi ISHIBASHI, Yuji YAMAGUCHI and Yasumichi KINOSHITA

要旨

透析治療において,血液が人工膜と接触を繰り返す透析患者は,一般に過酸化状態にあり,長期血液透析に伴い動脈硬化症や悪性腫瘍などの発症率が高い。これは,透析治療によって生じる活性酸素の酸化物質産生増加が関与していると考えられている。この酸化物質産生を抑制する為にポリスルフォン膜(PS膜)にビタミンEを固定化したダイアライザーCL-PSE膜が開発された。そのCL-PSE(以下PSE膜)と従来のビタミンEセルロース膜(以下CL-EE膜)とPS膜を使用し,溶質除去能,生体適合性,抗酸化能(MDA-LDL,SOD),凝固系(TAT)を測定し,PSE膜の性能を評価した。溶質除去性能では,PSE膜は既存のPS膜と同等以上の性能であった。抗酸化能では,MDA-LDLは,CL-EE膜からPSE膜の変更で透析前と後の値でそれぞれ低下していた。SODは,PS膜からPSE膜に変更後,透析後の値が上昇した。TATは,PS膜,CL-EE膜ともPSE膜に変更後,低値となり,凝固系の亢進が少なかった。上記の結果より,PSE膜は物質除去能,生体適合性について良好であり,ビタミンEの効果による長期合併症の軽減が期待できると考えられた。


Key words: 抗酸化作用,ビタミンE,活性酸素,PS膜,生体適合性