仙台赤十字病医誌　Vol. 12, No. 1, 77-81, 2003

症例報告

潰瘍性大腸炎に合併した大腸多発癌の1例

仙台赤十字病院　外科，内科^*，病理^**

工藤　貴志　　阿部　　永　　鈴木　幸正
中川　國利　　桃野　　哲　　佐々木陽平
山下　和良^*　　笹野　伸昭^**

A Case of Multiple Cancers of the Colon in Ulcerative Colitis

Department of Surgery, ^*Department of Internal Medicine,
^**Department of Pathology, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Takashi KUDO, Hisashi ABE, Yukimasa SUZUKI, Kunitoshi NAKAGAWA,
Satoshi MOMONO, Youhei SASAKI, Kazuyoshi YAMASHITA^*
and Nobuaki SASANO^**

要旨

症例は78歳の女性で，15年前から潰瘍性大腸炎と診断され治療中であった。3ヶ月前から下痢が生じ，大腸内視鏡検査で横行結腸に腫瘍を認めたため入院した。右上腹部に腫瘤を触知し，腹部超音波検査やCT検査で境界明瞭な腫瘤を認めた。大腸内視鏡検査では大腸全体に炎症を認め，上行結腸の肝彎曲部寄りに全周性の腫瘤を，また横行結腸の3ヶ所に腫瘤を認めた。生検でGroup 4であったため，リンパ節郭清を伴う結腸右半切除術を施行した。病理組織学的にはいずれも高分化腺癌で，壁深達度は上行結腸のみがssで，他の3ヶ所はsmであった。またリンパ節転移は認めなかった。術後経過は良好で，4ヶ月現在外来にて経過観察中である。潰瘍性大腸炎に合併した大腸癌では根治性を求めると全大腸切除術が必要であるが，自験例では高齢であったため結腸右半切除術を行なった。今後，慎重なる経過観察が必要である。

Key words: 潰瘍性大腸炎，大腸多発癌