仙台赤十字病医誌　Vol. 12, No. 1, 61-65, 2003

症例報告

多発性肝転移をきたした盲腸カルチノイドの1例

仙台赤十字病院　外科，病理^*

中川　國利　　工藤　貴志　　岡田　恭穂
鈴木　幸正　　桃野　　哲　　佐々木陽平
笹野　伸昭^*

A Case of Cecal Carcinoid Tumor with Multiple Liver Metastases

Department of Surgery and ^*Pathology, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Kunitoshi NAKAGAWA, Takashi KUDOU, Takaho OKADA, Yukimasa SUZUKI,
Satoshi MOMONO, Youhei SASAKI and Nobuaki SASANO

要旨

症例は56歳の男性で，検診にて便潜血反応陽性を指摘され，注腸造影検査で盲腸腫瘍と診断された。大腸内視鏡検査では盲腸に2cm大の腫瘍を認め，生検にてカルチノイドと判明した。また腹部超音波検査では肝臓に多発性腫瘤を認めた。そこで多発性肝転移を伴う盲腸カルチノイドと術前診断し，結腸右半切除術を行うと共に抗癌剤の肝動脈注入療法を目的にリザーバーを留置した。切除標本の組織学的検討では，多発性肝転移やリンパ節転移を伴う盲腸カルチノイドと判明した。術後，肝動脈注入療法を1年5ヶ月間，および経口投与を4年8ヶ月間行った。超音波検査では，術後1年頃から肝転移巣は消失した。術後5年6ヶ月現在，再発所見はなく，全身状態は良好である。多発性肝転移を伴う盲腸カルチノイドの治療として，結腸右半切除術と抗癌剤による肝動脈注入療法は有効であると思われた。

Key words: 盲腸カルチノイド，多発性肝転移，肝動脈注入療法