仙台赤十字病医誌　Vol. 12, No. 1, 23-30, 2003

原著

重度心身障害を有する難治性誤嚥患児に対する
喉頭気管分離術の検討

仙台赤十字病院　小児外科

遠藤　尚文　　佐野　信行

Laryngotracheal Separation for Pediatric Neurological
Impaired Patients with Intractable Aspiration

Department of Pediatric Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Naobumi ENDO and Nobuyuki SANO

要旨

重度の脳神経障害を有する患児では嚥下運動の不備により誤嚥が生じ，頻回の呼吸器合併症を繰り返す例が多数存在する。2001年12月からの13ヶ月間に14例に対して喉頭気管分離術を施行した。内訳は頭側気管断端の縫合閉鎖6例，頭側気管の食道端側吻合8例で，尾側気管を永久気管口とした。気管及び口腔吸引回数は著明に改善し，呼吸器感染症の頻度は減少した。術前より嚥下運動がある患児9例では，術後経口摂取訓練が開始でき，1例で半固形物も摂取可能となった。呼吸に伴う苦痛が軽減された結果，幅広いリハビリテーションが可能となった。術後合併症は1例で気管膜様部と食道気管吻合部の両者に瘻孔を形成したが，保存的管理にて閉鎖した。創感染と肉芽形成が各々1例認められたが，保存的治療で改善した。本術式は誤嚥による呼吸器合併症を効果的に防止でき，患児のQuality of life（QOL）は著明に改善された。

Key words: 難治性誤嚥，喉頭気管分離術，重度心身障害児