仙台赤十字病医誌 Vol. 12, No. 1, 9-14, 2003

総説

肝臓手術の適応拡大を目指して

仙台赤十字病院院長

小山 研二

How to Extend the Liver Surgry in Liver Tumor Patients with Surgical Limitations

Director, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Kenji KOYAMA, MD., FACS

要旨

手術的治療には,患者への身体的,精神的侵襲が避けられないので,優れた非手術的治療法がある場合は,より侵襲の少ない方法を選択するのは当然であるが,局所の病態,進行程度によっては,手術的治療が最適な場合も少なくない。しかし,疾患の局所的要素からは十分治癒可能にもかかわらず,生体の機能的評価から手術侵襲に耐えられない,と判定されることがある。この時に,安易に手術的治療を諦めず,患者のリスクをより正確に評価し,また,様々な方法で生体の耐侵襲力を増強させ,さらには,予測される術後合併症に備えた特殊治療法を準備することで,最適の治療法を安全に実施できるよう,外科医の弛まぬ努力が期待される。本稿では,外科的見地から,肝腫瘍の治療を例として述べてみたい。


Key words: 熱ショック蛋白,手術適応拡大,肝不全対策