仙台赤十字病医誌 Vol. 12, No. 1, 1, 2003

巻頭言

公式誌の役割

仙台赤十字病院長

小山 研二

多くの組織や団体は,自分達が公式に編集,刊行する定期刊行物(公式誌)を持っています。医学に関係する領域だけを考えても,各学会,大学,研究所,病院等から,沢山の公式誌が刊行されています。公式誌と言っても,その目的と性格は著しく異なり,各学会誌や高名な外国英文誌は,何よりも「新知見と独創性」を重視するのに対し,大学・研究所等のそれの中には,内部の研究等を公開することに主眼を置くものがあるなど,多種多様です。
 さて,私達の仙台赤十字病院医学雑誌は,基本的には本院に所属する人々が執筆者になります。そして,本院で医療を遂行する過程で経験した新しい,あるいは,比較的稀な事象,日々患者さんに接しながら抱いた疑問とその解釈,対応が困難な事例の解決のための工夫等々の報告から成り立つものです。従って,病院運営上の事務的な集計・記録も,今後,本院の様々な局面において参考にするための資料として残す意義があります。これらの目的から,本誌の掲載論文には,学会誌とは異なり,日常的なことでありながら見過ごされている事象に光を当てたり,本院において習慣的に行われていることを再評価する視点が期待されます。その際の着眼点や分析の方法に独創性があれば,高品質の論文にもなり,また,そこから得られた知見は斬新なものとなって本誌の価値を高めることになります。さらに重要なことは,本院の職員の皆さんが,そんな視点で日々の医療とそれに係わる業務を,考えながら行う態度を持ち続けることで,それが勝れた医療を行う病院を創る基本だと思います。
 考えながら日常業務を行うところから生み出された,成果に満ちた仙台赤十字病院医学雑誌第12巻が発刊されたことを心から喜び,嶋部長はじめ本誌編集委員の諸兄姉の労をねぎらうとともに,論文執筆者と協力された皆さんに感謝いたします。