仙台赤十字病医誌　Vol. 11, No. 1, 17-23, 2002

原　著

腹腔鏡下胆嚢摘出術における偶発症

仙台赤十字病院　外科

中川　国利　　鈴木　幸正　　豊島　　隆
桃野　　哲　　佐々木陽平　　手島　貞一

Complications of Laparoscopic Cholecystectomy

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Kunitoshi NAKAGAWA, Yukimasa SUZUKI, Takashi TOSHIMA,
Satoshi MOMONO, Youhei SASAKI and Teiichi TESHIMAs

要旨

　2001年12月までに施行した，腹腔鏡下胆嚢摘出術2,228例における偶発症について検討した。手術中の偶発症は，開腹移行を要した出血10例，胆管損傷6例，腸管損傷4例および横隔膜損傷による気胸1例であった。また手術後の偶発症は，創感染9例，胆汁漏出6例，腹腔内膿瘍3例，十二指腸潰瘍出血2例，肺炎2例，腹壁瘢痕ヘルニア1例および心筋梗塞1例であった。死亡した心筋梗塞の1例を除き，他の症例はいずれも治癒して退院した。腹腔鏡下胆嚢摘出術における偶発症の多くは，開腹手術でも生じる偶発症であった。また開腹手術と比較して偶発症の発生率が高いとされているが，手技の習熟に伴い減少した。しかし腹腔鏡下に対処できない偶発症が生じた場合には，躊躇せずに開腹手術へ移行することが大切である。

Key words: 腹腔鏡下胆嚢摘出術，胆嚢結石症，総胆管結石症，胆管損傷，腸管損傷