第六十一回北日本放射線腫瘍学研究会 2)『当院におけるT2-3声門癌の放射線治療成績』

 

2)『当院におけるT2-3声門癌の放射線治療成績』
宮城県立がんセンター 放射線治療科
和田 仁・佐藤 友美
久保園 正樹
宮城県立がんセンター 頭頸科
松浦 一登
はじめに
 当院で根治照射を行い,長期経過観察されたT2およびT3(paraglottic space進展例は除く)声門扁平上皮癌の放射線治療成績をまとめた。臨床データ収集は当院頭頸科の多大なご協力を賜った。この場をお借りして深謝申し上げる。



T2
  対象:1994〜2012年に当院で放射線治療を施行し,死亡確認または1年以上当院で経過観察した37例。男性35例,女性2例。治療時年齢は46〜85歳(中央値65歳)。頸部リンパ節転移4例(N1:3,N2b:1)。初診時に声帯不全麻痺4例。
 治療内容:照射単独13例(全例通常分割法),同時化学放射線療法(以下,CCRT)24例。総線量64〜70 Gy(34例が70 Gy)。化学療法はCDDP少量連日22例,CDDP 3週ごと(80 mg/m2)2例,CDDP動注1例。
 結果:一次効果はCR 35例,PR 2例。なお,20世紀に治療した症例は画像評価が不十分であった。追跡期間3〜228ヶ月。原発巣再発11例,頸部リンパ節再発8例,遠隔転移8例だった。5年原発巣制御率66%,原発巣再発は大半が救済手術で局所制御された。5年原発巣制御率の因子別単変量解析で統計学的有意差がみられたのは,声帯不全麻痺(有0%,無76%)と化学療法(有77%,無46%)だった。



T3(paraglottic space進展例は除く)
  対象:1994〜2012年に当院で放射線治療を行い,死亡確認または1年以上当院で経過観察された7例。男性5例,女性2例。治療時年齢は44〜73歳(中央値67歳)。頸部リンパ節転移2例(N2a:1,N2b:1)。
 治療内容:全例CCRT。総線量64〜71.4 Gy(4例が70 Gy)。化学療法はCDDP少量連日1例,CDDP3週ごと(80 mg/m2)1例,CDDP動注5例。
 結果:一次効果は全例CR。追跡期間8〜188ヶ月。原発巣再発4例,頸部リンパ節再発0例,遠隔転移0例だった。5年原発巣制御率20%,原発巣再発は全例救済手術が施行された。



ま と め
  T2は声帯不全麻痺があると局所制御全滅,また通常分割照射単独で局所制御が有意に不良であった。現在,過分割照射またはCCRTで局所制御率改善を目指している。機能温存が見込める場合は,治療期間なども考慮し喉頭部分切除が行われている。
 T3はCCRTでも局所制御不良だったが3年ほど局所制御される例もあり,救済手術が可能な施設なら喉頭温存CCRTも選択肢の一つになると考える。paraglottic space進展例については今後の課題である。
 



最 後 に
 本発表は一部改変して2014年の日本頭頸部癌学会にも発表予定である。本記録誌には抄録形式で掲載した点,ご容赦いただければ幸いである。