第六十回北日本放射線腫瘍学研究会 2)『子宮頸癌術後断端再発に対する放射線治療』

 

2)『子宮頸癌術後断端再発に対する放射線治療』
東北大学 放射線治療科
久保園正樹・梅澤  玲
松下 晴雄・菅原 俊幸
阿部 恵子・藤田 幸男
山本 貴也・古積麻衣子
高橋 紀善・神宮 啓一
東北大学 保健学科
武田  賢・土橋  卓
仙台総合放射線クリニック
小川 芳弘
背景と目的
 子宮頸癌術後の断端再発に対する放射線治療は外照射と腔内照射の組み合わせで施行されていると思われるが,治療法の詳細は確立されていない。1990年以降の当院での断端再発症例を遡及的にまとめた。


対象と方法
 1990年以降,当院で子宮頸癌術後膣断端再発に対して放射線治療を施行した19症例で 全例で腔内照射が施行されていた。 年齢は28-72歳で中央値58歳,これは再発時,すなわち当科紹介時点である。
 病期は初回手術時のFIGO分類で:0/IA/IB/IIA=5例/4例/7例/3例であった。
 組織型は扁平上皮癌が14例,腺癌(腺扁平)が5例であった。
 再発時の断端所見 は腫瘤形成がなく細胞診/組織診のみで診断されたものが11例,腫瘤形成(1-3 cm)していたものが8例であった。
 初回治療としての手術 は広汎子宮全摘術が12例,単純/膣式子宮全摘術が7例であった。
 放射線治療との併用化学療法は無しが17例,有りが2例であり,化学療法併用2例の内訳はweekly CDDPが1例,BIP療法1例 であった。
 外照射は全骨盤照射(WP)が10MVX線前後左右のいわゆるBOX 4門,中央遮蔽(CS)が10MVX線,前後対向2門であった。CSの幅は全例4 cmであった。
 腔内照射は全例Ir-192を用いた高線量率腔内照射であり,膣断端部にオボイド2本を配置。 線量評価点を粘膜下5 mmに設定し,1回6 Gy処方した。
 全19例中,外照射+腔内照射が13例,腔内照射のみが6例であった。以下に線量分割と対象の症例数を記す。  
 ・WP 30 Gy+CS 20 Gy+RALS 24 Gy/4回 9例(最多)
 ・WP 20 Gy+CS 30 Gy+RALS 24 Gy/4回 1例
 ・WP 50 Gy+RALS 18 Gy/3回 1例
 ・WP 40 Gy+RALS 30 Gy/5回 1例
 ・WP 30 Gy+CS 20 Gy+RALS 6 Gy/1回+boost 30 Gy 1例
 ・術後照射WP 50 Gy後 RALS 24 Gy/4回 1例
 ・腔内照射のみ:6例 RALS 24 Gy/4回 5例
  RALS 30 Gy/5回 1例


結果
 手術から再発までの期間は2-173カ月であり,中央値は8カ月であった。
 照射開始からの観察期間は8-184カ月であり,中央値は61カ月であった。
 一次効果はCR 18例,残存1例でありこの残存例は腺癌で細胞診のみの症例(肉眼的腫瘤形成なし)であった。膣断端局所に関してはCR 18例のうちその後の経過では3例が再発し,手術,レーザー,再照射などサルベージ治療が施行されていた。
 生存は7例,死亡は12例であった。
 原病死は10例,他病死2例であり,他病死2例の内訳は心筋梗塞1例,胆管癌1例であった。
 遠隔転移を来したのは10例であり,全例原病死していた。その組織型の内訳は扁平上皮癌5例,腺癌5例であり腺癌は全例であった。
 腫瘍形成した8例のうち7例は現病死しており,腫瘤の大きさ1 cmの1例のみ生存していた。全症例の全生存率は5年で63%であった。以下,全生存率(OS),原病生存率(CSS),無増悪生存率(PFS)を因子ごとに単変量解析を試みた。
 初回手術時の臨床病期,再発時の断端肉眼病変の有無,外照射の有無でCSSに有意差あり,病期はより早期の方が,断端肉眼病変が小さい方が,外照射を併用してない方が良好であった。 組織型はOS, CSS, PFS全てで有意差あり腺癌は予後不良であった。


考察
 治療後遠隔転移を来した例は全員原病死していた。組織が扁平上皮癌で断端に肉眼腫瘍がなく,初回臨床病期が0期の群は腔内照射単独でよく治っていた。 腺癌は早期に遠隔転移を来して予後不良なので,化学療法主体が望ましいかもしれない。臨床病期,外照射の有無,断端腫瘍の有無,組織型でCSSに有意差を認めたが,多変量解析はしていないのでどの因子が一番強いかは不明であった。恐らく組織型(腺癌)と思われた。
 有害事象は以下である。
 Grade 2の腸閉塞は1例であり,WP30+CS20+RALS 6 Gy/1回+boost 30 Gyの例であった。Grade 3の腸閉塞は1例であり,WP50+RALS 18 Gy/3回の例であった。
 Grade 2以上のろう孔とGrade 3以上の腸管障害を療法認めた症例が1例あり,照射後3年で 直腸膣ろう・膀胱膣ろうとなり回腸穿孔,人工肛門となった。この症例は術後予防照射WP 50後の再発に対しRALS 24 Gy/4 frs.後,更に再発し切除 ,更に再発し外照射(化分割照射)という治療がなされていた。
 結果,全19例中,Grade 2が1例 Grade 3が2例であった。
 RALSのみの症例での障害は認めなかった。
 この結果を踏まえて,今後は膣断端再発のみの症例には全骨盤照射は施行しない方針である。