第五十八回北日本放射線腫瘍学研究会 1) 『北海道大学病院における電子線の使用状況』

 

1) 『北海道大学病院における電子線の使用状況』
北海道大学病院 放射線治療科
土屋 和彦


 昨年度における当科での電子線治療状況を振り返るとともに当院における乳房切除後の放射線治療(PMRT)を紹介させて頂き,最後に興味深い症例を紹介させて頂いた。


① 昨年度の電子線使用状況
 平成23年4月1日〜平成24年3月31日の期間中に当科にて放射線治療を行った患者数は総新患数で956人,総治療数は1,347件であった。その内電子線を使用した患者数は76名,治療部位としては115部位であった。その内訳は乳房切除術後放射線治療(PMRT)が22例と最も多く次に頭頸部癌(後頚部へのブースト,上顎洞癌における目の間の部分)が17例,菌状息肉症を含む皮膚悪性リンパ腫が11例,乳癌術後胸壁(皮膚・皮下)再発が10例,その他転移等が数例ずつであった。一人あたりの治療部位数としては1部位が57例と最も多く2部位が11例であり3部位(最高7部位)以上は8例であった。部位の多い疾患は皮膚悪性リンパ腫であった。使用エネルギーとしては4Eが45例,6Eが37例,9Eが31例,12Eが3例であった。線量分布図の作成に関してはRTP上で線量分布を作成したのは115部位の内15例で残りはフリープランであった。主な疾患のエネルギーの決定,照射野の決定は以下の通り。PMRT:原則4E,見た目で決定。皮膚・皮下病変:CT,エコーで厚さ測定しエネルギー決定。照射野は病変に合わせ見た目で決定。頭頸部:CTにて深さ測定しエネルギー決定,照射野はDRRのプリントアウトしたものに書いて指示。
 線量に関して:PMRTは45-50 Gy/18-20 fr,悪性リンパ腫に関しては総線量30-40 Gyを基本とするが個々の症例に応じて検討していた。


② 当科における乳房切除術後放射線治療(PMRT)
 PMRTにおける標的体積は胸壁,鎖骨上リンパ節領域(SC)を含めることに関してはコンセンサスが得られているが傍胸骨リンパ節領域(PS)に関しては一定の見解がない。当科は原則としてPSも含めて照射することとしている。実際にはPS+SCをX線,前方一門で照射し胸壁は電子線(原則4E)でガントリーを15度傾けてX線とのギャップを5 mmと照射野を決定するが実際に見て照射野を決定している。


③ 症例供覧
 初診時顔面の病変が著明であり電子線照射により速やかに縮小した菌状息肉症の一例とCTプランを行い電子線照射を行ったKaposi肉腫の一例(文献的考察も加え)を供覧した。
 最後に電子線照射への希望としてRTP上でX線と同様にプランでき,そのまま位置情報,MUが治療機械に転送,治療できるようになること,また不整な皮膚表面でも均一に照射できる様な技術があると使い勝手が広がると意見させて頂いた。