第五十八回北日本放射線腫瘍学研究会 主題:『電子線治療の現況と将来』

 

主題:『電子線治療の現況と将来』
司会 東北大学大学院医学系研究科 放射線腫瘍学分野
松下 晴雄
はじめに
 北日本放射線腫瘍学研究会のテーマを決める機会をいただき,「電子線治療の現況と将来」という内容にさせていただきました。20年ほど前に膵臓癌の術中照射の仮想線量分布図を作ってみたことがあり,その時に電子線照射については正確な線量分布が得られないということを知りました。この20年の間に,CT画像データを用いての3次元治療計画は当たり前のものになり,X線シミュレータの時代には考えることのまずなかったPTVマージン,リーフマージンなどの概念も,これらなしでは安心して計画できないようになり,通常の照射においてもDVHを参考にしながら計画を修正するような時代に変わりました。一方で電子線照射については,あいかわらず視触診で直接照射野を決定することが多く,当施設ではRTP装置にビームデータを入れていないため,DVHはもちろんのこと線量分布図も見られないという状況です。不正確な線量分布図で判断しても仕方がないという考えも一理ありますが,PTV内最小線量や最大線量もよくわからない状態で治療を行うことになっています。
 多門照射やさらにはIMRTの技術で,X線照射のみでもかなり意に沿った分布の線量処方が作成できるようにはなりましたが,やはり実臨床において電子線を使用したくなる場面は相変わらずあり,疑問や不安を感じながら治療を行っているというのが現実であります。
 「この状況が,いつになったら変化していくのか」を特に照射計画装置メーカーの方に聞いてみたいと考え,スペシャリストに講演をお願いいたしました。また,他の施設の放射線治療医はどのように考えているのか,実情がどうであるのか,独自の工夫をしている施設はないのかなども知りたいと思い,アンケート調査を行いました。
 他施設の状況を報告していただくということで,「北海道大学病院における電子線の使用状況」を土屋和彦先生に,「弘前大学病院における電子線治療の現状」を川口英夫先生に発表いただきました。特に事前情報や私のまとめの内容などはお伝えしていなかったので,内容を絞りづらかったのではないかと思いますが,無理な要望にお答えいただきありがとうございました。
 照射計画装置メーカーからは,「電子線照射における照射計画」を(株)バリアンメディカルシステムズ・アプリケーショングループマネージャーの坂口薫先生に,「Xioによる電子線治療計画─電子線モンテカルロ」をエレクタ(株)カスタマーサービス部アプリケーションサポート・フィジックスサポートスタッフの中林匡先生にご講演いただきました。
 電子線照射計画の現況や将来の見通しについてわかりやすくお話しいただき,大変参考になりました。