第五十六回北日本放射線腫瘍学研究会 主題: 『高齢者の放射線治療の現状』

 

主題:『高齢者の放射線治療の現状』
司会 北海道大学病院 放射線治療科
鬼 丸 力 也
司会コメント
 2011年3月11日の東日本大震災により北日本放射線腫瘍学研究会の開催が危ぶまれましたが,6月16日にホテル東日本盛岡にて開催することが出来ました。震災により各施設に様々な影響が出ましたが,それらを乗り越えて開催できたことを大変うれしく思いました。
 今回のテーマは「高齢者の放射線治療の現状」とさせていただきました。日本社会の高齢化が進む中,私たちの施設の外来でも90歳の癌患者さんが受診されることが多くなった印象があります。合併症や残された臓器機能の状態などの個人差が大きく,高齢者と一括りにして治療方針を決定することに躊躇することも多々あります。各施設の対応状況を共有することは,日常診療で大いに役立つのではないかと考えました。
 今回の北日本放射線腫瘍学研究会では,北大の他,岩手県立中央病院から真里谷靖先生,新潟大学から笹本龍太先生に各施設の高齢者への放射線治療の経験を発表していただきました。それぞれの施設での経験を伺うことができ,大変有意義な会でした。
 北大からは高齢患者さんの増加の傾向について発表いたしました。体幹部定位放射線治療の有用性・安全性を反映しているのか,高齢肺癌患者さんの治療数が近年増加していることを発表いたしました。岩手県立中央病院からは高齢者の脳転移に対するRadiosurgeryの経験が発表されました。中枢神経死は30例中3例,neurological declineは30例中5例との成績でした。長期生存例もいらっしゃるとのことで,認知機能への影響が少ないと考えられるRadiosurgeryの有用性を再確認いたしました。また,新潟大学からは食道癌の治療経験が発表されました。70歳以上では治療関連死の割合が多くなるとのことで,治療法,特に併用療法の選択の難しさを改めて感じさせられました。
 体幹部定位放射線治療やStereotactic Radiosurgery,Stereotactic Radiotherapyのような比較的低侵襲で有効性の高い放射線治療が開発され,高齢患者さんに対する重要な治療法となっております。今後も高齢患者さんは増えることが予想され,よりいっそう有効性・安全性を高める努力が必要と再認識いたしました。