第五十四回北日本放射線腫瘍学研究会記録 4) 『食道癌再照射例の検討』

 

4) 『食道癌再照射例の検討』
東北大学病院 放射線治療科
久保園 正 樹・有 賀 久 哲
武 田   賢・小 藤 昌 志
菅 原 俊 幸・清 水 栄 二
白 田 佑 子・田 邊 隆 哉
山 田 章 吾
 当院にて食道癌根治照射後に,食道に再照射,もしくはリンパ節再発などで食道が再照射野に含まれる症例について検討した。全9例の簡単な経過を記す。

 症例1:初発時78歳
 表在食道癌T1N0に70 Gy
 5年後食道に再発,再照射HF60 Gy,狭窄症状は改善
 6年後に再再発
 8年後に原病死

 症例2:初発時69歳
 表在食道癌T1N0にCRT60 Gy
 3年後噴門部LN再発,再照射HF60 Gy, NC→PD
 8年後に原病死(LN転移の胃浸潤による出血)

 症例3:初発時74歳
 進行食道癌T3N1M1aにCRT60 Gy PR
 2年後局所増大による再狭窄に対しに再照射HF48 Gy NC→PD ほどなく原病死(肺炎,吐血)

 症例4:初発時61歳
 進行食道癌T3N0にCRT70 Gy PR
 残存あり再増大,1年で再照射40 Gyつかえ感は改善するもすぐに再増大し,1年8ヶ月後に原病死(肺炎)

 症例5:初発時76歳
 進行食道癌T3N1M1aにCRT70 Gy CRとなるも,照射野外の反回神経LN腫大→9ヶ月後に再照射HF60Gy NC  13ヶ月後に原病死(両側胸水貯留)

 症例6:初発時43歳
 進行食道癌T3N1 CRT70 GyCR
 1年後食道再発にて手術
 2年後頚部食道再発に再照射HF60 Gy CR
 3年後照射部位の再発
 3年半後原病死(腎機能障害,肺炎,心嚢液貯留)

 症例7:初発時65歳
 進行食道癌T4N1 CRT 70 Gy PR
 1年2カ月後予防域の食道に病変出現し再照射HF48 Gy
 2年6カ月後再再発 フルツロン投与
 3年6カ月胸水,心嚢液出現
 4年9カ月後 大腸癌手術 その後不明

 症例8:初発時68歳
 表在食道癌T1N0 EMR後断端陽性 RT70 Gy
 6年後,糖尿病,高血圧により腎機能悪化
 10年後,胸部中部食道再発し再照射HF60 Gy CR
 11年後,内視鏡にて不染帯出現  以後,再再発疑いで定期的に内視鏡するも生検せず。CTでは腫瘤形成はなし。徐々に狭窄感は増強。癌性か晩期障害の食道狭窄かは不明。
 13年後,死亡(心不全,腎不全)
 症例9:初発時57歳。唯一の女性
 進行食道癌T3N1 CRT60 Gy
 2年後,食道狭窄にてサルベージ手術。癌細胞はなし
 3年後,嗄声あり,反回神経LN再発し,同部位にSRT 60 Gy/15 frs. CR
 3年半後,食道潰瘍あり
 5年後,無病生存。経口摂取可能
考 察
 統計学的な検討は加えていない。
 初回治療時の病期が早く,再照射までの期間が長いものはその後の予後も良好であった。
 初回治療時の病期が進行しており,再照射までの期間が短いものはその後の予後も不良であった。初回治療時の照射後残存病変などにはほぼ無効であった。
 死亡原因は無病生存が1例のみであり,全例死亡時点ではviableな腫瘍があったため原病死となるが,胸水貯留や心不全などが直接の死因となっているcaseが多くみられた。再照射による呼吸器循環器系の晩期障害に修飾されている可能性は十分に考えられると思われた。