第五十四回北日本放射線腫瘍学研究会 2) 『上咽頭癌放射線治療後再発に対する再照射例の検討』

 

2) 『上咽頭癌放射線治療後再発に対する再照射例の検討』
北海道大学 放射線科
鬼 丸 力 也・安 田 耕 一
西 川   昇・白  博 樹
北海道大学 耳鼻咽喉科
本 間 明 宏・折 舘 伸 彦
福 田   諭
目 的
 上咽頭癌の放射線治療後局所再発に対する治療として,再照射が選択されることも多い。近年の放射線治療技術の発達で再照射技術も向上してきており,それらを用いた再照射治療成績の報告も散見される。今回,我々は,上咽頭癌局所再発後の再照射症例をreviewし,3DCRT時代における上咽頭がん放射線治療後再発における再照射のあり方を検討する。
症 例
 再照射が成功した症例を呈示する。63歳女性,初診時の病期はT1N0M0(TNM 6th)であった。66 Gy/30回/7.5週の放射線治療を2004年4月28日から6月21日まで行った。その後外来にて経過観察していたが,2005年10月25日上咽頭天蓋に再発,病期はrT1N0M0であった。

(左:初診時,右:再発時)

 [再照射および再照射後経過]
 2005年11月24日から12月30日まで50 Gy/25回の再照射を,Weekly CDDP 40 mg/m2同時併用にて施行。その後外来経過観察中。2010年3月16日局所再発無く生存しており,再照射後4年3ヶ月間,生存している。4年3ヶ月時点でのCTを示す。


対象・方法
 北海道大学病院で上咽頭癌の根治的放射線治療後に原発巣・ルビエールリンパ節再発した症例で,1990年から2010年5月までに北海道大学病院で再照射を行った20名を対象とした。再発までの期間は0.5-9.9年,中央値は2.0年であった。
 初回治療の線量・回数は,65 Gy/26回が2名,66 Gy/30回が12名(うち1名は20 Gy/4 frのSRT追加),70 Gy/35回が4名,74.8 Gy/34回が2名であった。
 再照射時TNMは,rT1が13名(うち1名縦隔リンパ節転移,1名骨転移あり),rT3が4名(うち1名肺転移あり),rT4が1名,rN1(ルビエールリンパ節)が2名であった。
 再照射の線量は,Equivalent total dose3が,30-71.5 Gy (平均51.0 Gy,中央値50 Gy)であった。
結 果
 再照射後生存率は2年58.5%,5年18.3%であった。再照射後局所制御率は1年67.9%,2年43.1%であった。晩期反応として出血死が1名認められた。
考 察
 文献的には上咽頭癌再照射後の5年生存率は9-60%とばらつきが大きい1)。患者選択のバイアスが大きいと思われ,当施設の成績について判断を下すことは難しい。晩期反応については,累積線量が110 Gyを超えると合併症が多いという報告がある2)一方,再照射線量が60 Gyと60 Gy未満で生存率に差があるという報告がある3)
 最近はchemoradiation4),定位照射5)など,治療技術の進歩を反映した報告が多い。
 個人的に考える再照射のよい適応は,@ rT1〜rT2(rT3は脊髄や脳幹の線量を考慮すると再照射は難しい),A ルビエールリンパ節だけの再発,である。再照射する場合は出来る限りtargetを絞り,concurrent chemotherapyを行うというのが,当施設の現在の方針である。
参考文献
1) Koutcher, L., et al., Reirradiation of locally recurrent nasopharynx cancer with external beam
  radiotherapy with or without brachytherapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys,
  2010. 76(1):p.130-7.
2) Nakamura, T., et al., Chemoradiotherapy for locally recurrent nasopharyngeal carcinoma:
  treatment outcome and prognostic factors. Jpn J Clin Oncol, 2008. 38(12):p.803-9.
3) Oksuz, D.C., et al., Reirradiation for locally recurrent nasopharyngeal carcinoma:
  treatment results and prognostic factors. Int J Radiat Oncol Biol Phys,
  2004. 60(2):p.388-94.
4) Chua, D.T., J.S. Sham, and G.K. Au, Induction chemotherapy with cisplatin and gemcitabine
  followed by reirradiation for locally recurrent nasopharyngeal carcinoma.
  Am J Clin Oncol, 2005. 28(5):p.464-71.
5) Pai, P.C., et al., Stereotactic radiosurgery for locally recurrent nasopharyngeal carcinoma.
  Head Neck, 2002. 24(8):p.748-53.