第五十四回北日本放射線腫瘍学研究会 主題: 『3次元時代における再照射の検討』

 

主題: 『3次元時代における再照射の検討』
司会 東北大学大学院医学系研究科 放射線腫瘍学分野
有 賀 久 哲
司会コメント
 癌治療の標準化が進む今日,再照射の適応を判断することは,日常臨床において放射線腫瘍医の頭を悩ませる難問のひとつです。再照射はいっさい行うべきではないという立場も成立しうる領域ですから,再照射の意義を感じながらも,治療方針・治療技術の両面に渡って,不安を抱えながら診療を行っている腫瘍医も多いものと想像します。
 1991年に根本らが食道癌再照射38例の治療成績をまとめ,再照射例の予後は極めて不良ながら,1) 初回治療効果が高く,2) 治療間隔が長く,3) 深い潰瘍形成のない症例については,症状改善・予後延長の可能性があると考察されています。それから20年が経過した現在,3次元治療計画,化学放射線療法など,放射線治療環境は大きく変化しました。放射線治療成績は向上し,より早期の患者が自ら放射線治療を選択して受診することも珍しくなくなりました。定位照射やIMRT等により低侵襲で治療可能比の高い放射線治療が可能となる一方で,局所再発したが一般状態は良好で再度の根治治療に十分耐えられる症例や,癌治癒後の生存期間が長くなることで二つ目の癌を発症する症例など,再照射を検討する必要がある複雑な病歴の患者が増加しているように感じます。
 治療技術が進歩し,照射需要も増加しつつある「3次元時代」において,再照射を行う意義・適応は拡大したのか,それとも避けるべき実りの少ない治療なのか,今一度皆で検討してみたいと感じ今回のテーマを企画しました。再照射が問題となることが多いと思われる5疾患(上咽頭癌,脳転移定位照射,食道癌,脳腫瘍,骨盤腫瘍)について,症例報告・まとめをいただき,フロアからも様々な経験・意見を発言いただきました。予想以上に活発な議論ができたと考えておりますが,現代の再照射という切り口で知識・経験を共有していただけたのであれば幸いと存じます。