第五十回北日本放射線腫瘍学研究会 主題: 『膀胱癌に対する放射線治療成績』

 

主題:『膀胱癌に対する放射線治療』
司会 岩手医科大学医学部 放射線医学教室 中村 隆二
司会コメント
 当科では近年膀胱癌に対する根治照射症例が増加したものの成績は「ガイドライン2004」に記載されている数字には遠く及ばず,他施設の膀胱癌放射線治療の実際を教えて頂きたいと思っていました。また,最近では「膀胱温存療法」による好成績が報告されており,もし実施されている施設があればご報告頂きたいと考え今回のテーマを世話人会で提案しましたところ,札幌市立病院,山形大学,東北大学からの発表が即決され安堵しました。また,膀胱癌に対する治療戦略のなかで放射線治療の位置づけを泌尿器科側からお聞きしたいと思い,晴山雅人先生より札幌医科大学准教授の舛森直哉先生をご紹介頂き特別講演をお引き受け頂きました。
 当日は当科を含めた4放射線治療施設より照射の具体的な方法,治療成績,合併症について発表され,照射中の水分摂取の重要性,超音波検査を併用した照射野設定法,動注化学療法の併用などが報告され注目されました。照射前処置の具体的な方法(排尿・排便の管理など)について議論が少なかったのは残念でした。各施設とも膀胱癌の治療方針の決定は泌尿器科が主導権を握っているようで,それに対するフラストレーションも表明されました。“Away”会場にのりこんで来られた舛森先生は豊富な手術経験をもとにした予後因子の解析結果を詳述され,最後に「泌尿器科の癌のなかで腎癌,前立腺癌は新しい治療法が出現して成績が向上しているが膀胱癌はとり残された課題」と総括されました。その中でcN病期とpN病期が乖離(cN≪pN)しているとの指摘は放射線治療医にとって参考となる報告でした。