第四十五回北日本放射線腫瘍学研究会記録 主題: 『全身照射の照射法と合併症』,2-6
6) 東北大学放射線治療科における全身X線照射の現況
東北大学 放射線治療科
○高 井 憲 司・奈良崎 覚太朗
坂 谷 内  徹・菅 原 俊 幸
佐 藤 幸 子・小 川 芳 弘
根 本 建 二・山 田 章 吾

医学部保健学科
高 井 良 尋

 当施設における全身X線照射(以下「全身照射」と略)について,現況を報告する。
全身照射は,骨髄等の移植前処置としてしばしば施行される。目的は,悪性腫瘍細胞の死滅を図る(悪性腫瘍疾患の場合)こと,宿主の免疫担当細胞であるリンパ球の不活化による拒絶の予防のふたつである。
 当科所有の症例データベースより最近10年間(1995〜2004年)の全身照射例を抽出したところ,88症例認められた。2001〜2004年の最近4年間では年10例を越しており全体としては増加傾向にある。患者の内訳は,男女とも44例と同数で,照射開始時年齢は1〜53歳,平均は24.7歳であった。対象疾患は,白血病が80例と最も多く,神経芽細胞腫5例・悪性リンパ腫2例であった。これらは,強力な化学療法後骨髄移植の必要が生じその前処置として行われた。ほかに,再生不良性貧血1例に対し,骨髄移植前処置として行われた。
 照射方向は,基本的に前後対向2門を用いている。主に用いるエネルギーは,治療設備更新前後で異なり,1996年以前は10MV,97年以降は6MVが主流である。また,線量基準点の決定法として主にlong STD法を用いている。
 投与線量は,原則として1回2Gy・1日2回で3日間,計12Gyである。但し,急性リンパ球性白血病などで過去に照射歴のある症例については,2.5日間で10Gyに減量している。
線量率を5cGy/minと低く設定し,晩期副作用の回避を図っている。
線量基準深を決定する際の体厚の測定位置は,頭額部・胸骨上縁・心窩部・臍部・恥骨結合部を用いている。基準深は,このうちのひとつの値を代表値として,または複数値の平均値を用いている。
 肺・腎などのcritical organに対する遮蔽については,依頼科の一任としている。白血病などの悪性腫瘍疾患では遮蔽なしの症例が圧倒的に多いが,調査した20例の内では,生活上支障を来すような重篤な副作用は認められなかった。残りの症例については,今後調査予定である。