3) 当院での放射線治療におけるベッドマネージメントとインフォームドコンセント
弘前大学医学部放射線医学講座
  場 崎   潔・青 木 昌 彦・畑 山 佳 臣・阿 部 由

はじめに
 放射線治療患者は年々増加し,それに伴い,放射線治療業務も増加しているが,それに見合った十分なスタッフの増加はない。当院での放射線治療患者におけるベッドマネージメントの現状とインフォームドコンセントの変遷につき検討した。 放射線治療患者のベッドマネージメント 現在より15年前,昭和63年の弘前大学病院放射線科の放射線外照射の新患登録件数は206名であった。その後,10年間,年間件数は約200名前後で推移していたが,平成10年より徐々に増加し,昨年度の件数は347名であった。これに対し,放射線治療担当医の数は,平成5年は6名であったが,現在,3名まで減少している。
 治療患者の内訳は昭和63年当時,根治照射が157名,姑息照射が49名であったが,平成15年には,根治照射206名,姑息照射101名であった。根治照射・姑息照射ともに増加し,姑息照射の数は2倍になった。疾患別の内訳は頭頚部癌,乳癌,脳・骨転移,肺癌の順に多く,いずれも過去15年間増加傾向にある,これに対し,子宮癌が半減していた。昨年度の放射線科入院患者数は約270名(一般病棟180名,RI病棟90名)であり,平均在院日数は約27日(一般病棟37日。RI病棟6日)であった。疾患別の新患患者のうち放射線科に入院する割合は,脳・骨転移,肺癌の患者が多く,3割以上が放射線科入院となった。乳癌患者の件数は増加しているが,乳房温存術後の予防照射が多く,外来治療を行う数が多いため,入院数は前2者ほど多くなかった。平均在院日数は食道癌と頭頚部癌が70日以上と長く,次に肺癌が62日であった。乳癌の入院は主に遠方で通院困難によるための入院で,日数は43日であった。脳・骨転移は照射期間が短いため,日数は27日であった。
 RI病棟の入院は大部分が甲状腺癌のアイソトープ治療のための入院であった。以前は治療の前処置の期間から入院していたが,現在はヨード内服と隔離期間の前後のみの入院となっているため,入院期間は著しく短縮している。 インフォームドコンセント 平成7年下旬よりインフォームドコンセントに関し,文書による記録が始まった。空欄補充様式による専用の説明用紙を作成し,適宜,改訂を行っている。副作用につき対象部位別の説明用紙も用いていたが,項目数が頻度の少ないものまで含め多岐にわたっており,現在は用いていない。院内に関しては前医よりの紹介時に専用の頼診券を用い,前医でのインフォームドコンセントの把握の助けとなっている。各説明用紙を供覧した。  甲状腺癌のアイソトープ治療に関してはクリティカルパスを用いている。
ま と め
 10年前に比べ放射線治療新患数は7割増しになったが,治療担当医の数は5割減であった。放射線治療は肺癌,乳癌,頭頚部癌,脳・骨転移に対する照射が増え,肺癌と脳・骨転移による入院の割合が大きい。RI病棟入院患者数の増加が著しく,昨年度は入院患者数の内,3分の1を占めていた。甲状腺癌のアイソトープ治療患者が著増した。RI病棟患者の大部分は甲状腺癌のアイソトープ治療患者であった。アイソトープ治療患者は入院患者全体の在院日数短縮に大きく貢献していた。
 平成7年後半から文書を用いたインフォームドコンセントが始まった。前医からの紹介時にも専用の頼診券を用いた。甲状腺癌のアイソトープ治療患者についてはクリティカルパスがインフォームドコンセントの一端を担っている。