2) 宮城県立がんセンター放射線治療科におけるベッドマネージメントとインフォームドコンセント及び業務実態
宮城県立がんセンター 放射線治療科
  
   久保園 正 樹・角 藤 芳 久
 当院は宮城県南に位置し,東北地方唯一の癌センターである。病院全体での病床数は383床,常勤医師数は約50人である。放射線科医は総数で4人,診断医が2人,治療医が2人で業務を行っている(Table1)。診断と治療で業務はほぼ完全に分かれている。  当科の病床数は16床であり,入院患者の大半は照射目的である。入院が必要な場合,原則として院内からの紹介患者は紹介元入院で照射をおこなっている。院外からの患者は放射線科入院となる。ただし伝統的に食道癌の患者は当科で入院加療,経過観察をおこなっている。また脳転移は脳外科,骨転移は整形外科が主治医となることが多い。その他,緩和医療科,化学療法科があり,原発不明患者や末期患者などの管理を担当されている。

Table1. 治療施設とスタッフ数の全国平均 (JASTRO誌より抜粋)

〈放射線治療に関して〉
 放射線治療科の年間新患数は約500人である。(2003年度),10年前は約150人であり,年々50人ずつ増加している。10年間で約3倍増となった(Fig.1)。
 一日あたりの照射人数は約80人であり,おおよそ20人ほどは外来通院照射である。外来通院患者は週2回診察,他科入院患者は週1回診察としている。
 全照射患者のうち根治照射(術後予防照射を含む):姑息照射の割合は約1:1である。HFやAHF含む通常の照射の他には肺のSRT,脳転移のSRS/SRT,コバルトRALS,全身照射を行っている。IMRTや術中照射は当院では施行していない。
 リニアックはVarian社製が1台,三菱製が1台の計2台である。
 治療計画装置はGEとVarianが共同で開発したSMART GANTRY SYSTEMを用いている。X線simulatorとCT-simulatorが一体となった計画装置であり,寝台に患者を乗せたままどちらでも計画可能となっている。


Fig.1 治療新患数の推移

Table2. 治療計画の業務実態

ちなみにCTは2列のMDCTである。X線simulatorはACUITYといい,透視画面上でMLCの挿入が可能である。MU値の計算もいずれ透視画面上で可能となる予定である。現時点ではMU計算ができないため医師がModulexで行うか,更にCTを撮像しXiOにて計画を再現してMU計算している。
 治療計画装置はCMS社製のXiOが3台入っている。submachineでfocalも2台入っている。ワークステーションがhp workstation xw8000, Dual CPUというマシンであり,計算がとても速くストレスがない。その他SRS用のfastplanという計画装置が1台ある。RALSにはModulexを用いている。こちらもいずれXiOで計算可能となる予定である。以上,照射の機械に関しては比較的最新のものがそろっている。
 照射を担当する技師は4.5人である。基本的には4人であるが核医学担当技師が手伝いに来る場合があり,4.5人とした。最近当院では‘品質管理の日'を月に1回設定し,その日は照射を休みとして線量測定等のQA/QC業務にあてている(Table2)。
〈治療計画業務に関して〉
 最近まで当院ではCTでの計画は全て医師のみで行っていた。CTをたちあげて患者及びカルテを取り寄せて患者を寝台に寝かせて固定具を作成しリファレンスラインをマーキングしヨード造影剤をセットして静脈ラインを確保しCTを撮像して治療計画装置に転送,これらを全て1ないし2名の医師で行っていた。現在はこれらの業務の大半を技師がしてくれるようになった。但し看護師が計画室について手伝いをしてくれるのは週2回半日のみ。事務員もいない。また当院では患者及びカルテ運搬のメッセンジャーがいないため,誰が搬送するかでしばしば看護師サイドとくだらない衝突がある。また前述したように計画室には事務員もいないため,照射録やフォローカード,はさみ,のり,カッター,プリンター用紙,トナーなどの文房具管理,物品発注も重要な医師の仕事である。発注してからの動きはお役所体質で遅いため当科では科長みずから‘JASTRO認定文房具取り扱い主任'として管理,発注を日々行っている。
〈入院管理について〉
 入院患者管理の変遷について。当院にて比較的昔から働いている先生に尋ね,昔のカルテを調べてみた。患者管理自体も昔よりは複雑になってはいるが,なんといっても書類の記入,オーダリング端末入力などのいわゆる‘雑用'が増加している事がわかった。インフォームドコンセントに代表される同意書の取得も大きな変化である。10年前から当院であるものとしては通常の2号紙記載の他,入院サマリー,紹介状,放射線照射録,保険書類,フォローカード(照射録とは別の経過観察用の記録),がん登録用紙(恐らく癌センターのみかもしれない)がある。現在ではこれらに加えて,入院療養計画書,退院療養計画書,検査や手技の同意書(手術,化学放射線治療,ヨード造影剤,内視鏡,CV挿入…)検査依頼状(CT, MRI.シンチグラム,PET)が加わる。放射線治療に関しては当科外来で全員説明はするが,きちんとした書式でのインフォームドコンセントは当科入院患者で放射線化学療法を施行する場合のみ取得している。また指示簿に記述した指示に関しては検査,点滴を含め多くがオーダリング端末からの医師の直接入力が必要であり,2度手間の感が否めない。最近は‘発生源入力'という原則が広まりつつあり時代の流れかもしれないが,患者と向き合う時間を減らす雑用の最もたるものであり,なんとかならないかと個人的には思う。自分の後輩や学生に‘放射線治療科は忙しいけどやりがいがあって楽しいぞ'と胸をはって勧誘できる職場環境を整えて行きたいものである。