第四十一回北日本放射線腫瘍学研究会記録 主題 「食道癌に対する化学放射線療法II, III, IVA期」,0-0
4) 切除可能な胸部食道癌に対する化学放射線療法の検討
東北大学 放射線治療科
   久保園 正 樹・高 井 良 尋
   根 本 建 二・小 川 芳 弘
   高 橋 ちあき・小 藤 昌 志
   野 宮 琢 磨・藤 本 圭 介
   K・R・ブリトン・一 瀬 あずさ
   神 宮 啓 一・山 田 章 吾
同 移植再建内視鏡外科
   小野寺   浩・宮 崎 修 吉
 当院では食道外科,腫瘍内科と共に切除可能な胸部食道癌に対しての化学放射線療法と手術の比較を目的としたprospectiveな臨床試験を施行中です。2003.11.1時点での平均観察期間は14.6ヶ月と短いですが化学放射線治療の中途解析を報告させていただきます。
 症例の適格条件は胸部食道(Ut,Mt,Lt)原発sqccの食道癌(Ut,Aeは除かれる),UICC分類でT1b〜T3,any N,M0,StageI〜III,年齢は20〜80,PSは0〜1,他臓器癌の化学放射線治療歴が無いこと,活動性重複癌がないこと,適切な主要臓器機能を保持している(心肺肝腎等,Ccr>50,T-bil<3,等々…)事などであり,外科的手術に耐え得ると判断された症例がエントリーされています。患者様に手術,CRT両方の説明を施行し,治療法を選択して頂いております。治療方法はがんセンター東病院のsplitプロトコールと同様であり,放射線治療30Gy+CDDP40mg/m2(day1,8)+5FU 400mg/m2(day1-5,day8-12)を1クールとして2週間あけて2クール施行後,僅かでも効果のみられた症例にはCDDP 80mg/m2,(day1),5FU 800mg/m2(day1-5)の補助化学療法を1週間投薬,3週休みで2クール施行しています。それぞれ延期,化学療法減量,中止基準があります。詳しい基準は割愛しますが,経過中に原病の増悪が見られた際,PS4, 肝腎機能障害,放射性肺炎の出現,骨髄抑制が回復しない際にはCRTを中止しております。その後手術可能な例では手術を施行しています。
 放射線治療は10-15MVXを用い,最初の40Gyは前後対向2門にて両側鎖骨上窩〜腹腔動脈起始部まで含んだsuper long T-felds,後半20Gyは骨髄を外した斜め対向2門にて食道原発巣(±3cm以上のマージンを含め),リンパ節転移がある場合は含めて照射しております。総線量60Gyで,30Gy後に2週間の休みが入ります。
 対象症例の概要は2003.11.1現在,29例(男24例,女5例),年齢は43-79(median63)部位はUt4例,Mt 18例,Lt 7例でした。進行度はUICC分類でStageIが7例,StageIIAが5例,StageIIBが6例,StageIIIが11例でした。平均観察期間は14.6カ月(4-24),プロトコール完遂率89.7%(26/29)でした。
 一次効果については29例中26例がCRとなりました。そのうち20例は現在までCR継続中で,StageIとIIAが全て含まれます。残り6例のうち3例は局所再発を来し手術施行されました。3例は局所CRのまま遠隔転移にて原病死しております。この6例は全てStageIIIでした。29例中2例はCRとならず腫瘍残存にて手術しています。StageIIBとStageIIIが1例ずつでした。29例中1例は放射線性肺臓炎にて障害死しております。この症例はStageIIIでした。
 全症例の粗生存率はMST:22ヶ月,2年生存率は82%でした。StageI,IIA,IIBとStageIIIにて有意差を認めました(P=0.0082)。
 全症例の無病生存率はMST:19ヶ月,2年生存率は72%でした。StageI,IIA,IIBとStageIIIにて有意差を認めました(P=0.0005)。
 全症例の原病生存率はMST:22ヶ月,2年生存率は85%でした。StageI,IIA,IIBとStageIIIにて有意差を認めました(P=0.0207)。
 急性障害は血球減少と食思不振が主でした。WBC減少はgrade2:11例,grade3:13例でした。PLT減少はgrade2:4例,grade3:3例でした。ほぼ全症例が輸液and/or制吐剤を使用(grade3)しました。肺毒性は1例であり照射終盤に放射性肺炎発症(grade4)し,障害死しております。プロトコール非完遂の3例の内訳はgrade4の食思不振が1例,grade4の放射線性肺臓炎が1例,Ccr<50の腎機能障害が1例でした。
 晩期障害は照射終了後約6ヶ月でgrade4の放射性肺臓炎を認めております。肺気腫のある症例でした。
 平均観察期間は短いですが,現時点では良好な治療成績と思われます。今回の解析では年齢,性別,部位などでは有意差は認めませんでした。毒性に関してはgrade4以上の放射性肺臓炎が2例発症しており軽度とは言えません。化学療法のintensityの問題,両側鎖骨上窩〜腹腔動脈起始部に及ぶ巨大な照射野が問題と思われます。