第四十一回北日本放射線腫瘍学研究会記録 主題 「食道癌に対する化学放射線療法II, III, IVA期」,0-0
2) 秋田大学での食道癌放射線化学療法の検討(II, III, IVA期の治療成績)
秋田大学医学部統合医学講座放射線医学分野
   安 倍   明・泉   純 一
   渡 会 二 郎
目   的
 秋田大学付属病院での食道癌に対する放射線化学療法についてretrospectiveに比較検討したので報告する。

対象と方法
 対象は1991年4月より2002年12月まで当院において放射線化学療法を施行した食道癌II,III,IVA期の63症例である。男性が56例,女性が7例で年齢は42〜82歳(平均66歳,中央値67歳)であった。
 全例が組織学的検索で扁平上皮癌の病理診断を得た。臨床病期はII期が16例,III期が29例,IVA期が18例であった。T-Stage別ではT2が20例,T3が14例,T4が29例であった(表1)。なお,当時の当院での食道癌に対する外科,内科との治療方針の取決めで放射線治療については,病期進行度や合併症のために手術適応なしと判断され放射線化学療法を行う場合と,術前照射として行う場合とに大別され,今回の対象63例の中で当初より根治照射目的であったものが48例,術前照射として開始するも結局手術適応なしと判断され根治照射をおこなったのが15例であった(表2)。
 外照射は6〜10MV-X線を使用した。照射野は原発部位およびリンパ節転移を含んだ照射野を設定した。根治照射では前後対向2門の1.6〜2.0Gy/Dayによる通常分割照射で40〜45Gyを照射した後,斜入2門照射に変更して総線量50〜70Gyの照射を行った。術前照射として計画されたが結局根治照射を行った症例には最初に前後対向2門の2.4Gy/Bid/DayのHF法による照射で38.4Gyの照射を施行後,斜入2門照射の1.8〜2.0Gyの通常分割照射で総線量50〜70Gyの照射を行った(表3)。
 化学療法は1991年〜1999年頃まではA:CDDP 50mg/m2/d day1,5-FU 300mg/m2/d day1〜5を1クールとして4週ごとに2〜3クール。またはCDDP 40mg/m2/d day1,8,5FU 300mg/m2/d day1〜5,day8〜12を1クールとして5週おきに2クール,もしくはB:5FU 250mg/m2を2〜4週の連日投与を行った。また症例によってはMMCやPEPが併用されることもあった。1997年ごろからはLow dose FPとしてC:CDDP 3〜5mg/m2/d+5FU 250〜300mg/m2/dの連日投与を2〜6週間行った(表4)。

結   果
 病期別の累積生存率を示す。3年累積生存率はII期が39.3%,III期が20.9%,IVA期は2年累積生存率で10.8%であった(図1)。単変量解析では有意差はみられなかった。
 T-Stage別の累積生存率はT2の3年累積生存率が36%,T3が23.4%,T4は2年累積生存率で14%であった(図2)。有意差はなかった。

図1.病期別累積生存率


図2.T-Stage別累生存率


図3.科学療法別累積生存率

 化学療法のレジメン別の累積生存率はAのレジメンが22.7%,Bが33.3%,Cが41.2%であった(図3)。有意差はなかった。

ま と め
 当院の食道癌治療は外科切除が中心で進行症例に対しても術前照射を併用し手術を施行する傾向にあり,放射線化学療法を施行する症例は限局していた。
 生存率に病期別,T-Stage別,また化学療法のレジメン別においても有意差は明らかではなかった。
 なお2003年度からは食道癌の治療の見直しが行われ,放射線化学療法施行例が増加してきている。今後の照射野設定,及び分割について検討が必要と考えられる。