第四十一回北日本放射線腫瘍学研究会記録 主題 「食道癌に対する化学放射線療法II, III, IVA期」,0-0
1) 新潟大学ならびに関連病院における食道癌化学放射線療法の治療成績
新潟大学医歯学総合病院 放射線科
   笹 本 龍 太・土 田 恵美子
   山ノ井 忠 良・笹 井 啓 資
新潟放射線治療研究会
    

目   的
 当院ならびに関連病院において行っている食道癌に対するCDDP+5FU少量同時併用放射線治療の成績をまとめる。

対象と方法
 対象は1994年から2001年までに当院ならびに関連病院においてCDDP+5FU少量持続併用放射線療法を施行された食道癌で,適格条件(80歳未満,PS=0〜3,M0:ただし鎖骨上窩LN転移は含む,主要臓器の機能が保たれている)を満たす68例である。
 症例の内訳は男:女=61:7,年齢40〜79歳(中央値65歳),原発部位Ce:Ut:Mt:Lt=7:13:37:10,T1:2:3:4=0:8:25:35,N0:1=32:36,M0:1(鎖骨上窩リンパ節)=58:10,StageI:II:III:IV=0:22:36:10であった。
 放射線治療はCeおよびUtにおいては両側の鎖骨上窩ならびに気管分岐部リンパ節までを含むShort-T照射野,MtおよびLtにおいては全縦隔ならびに上腹部リンパ節までを含むLong-L照射野を原則的な基本照射野とした。1回線量1.8〜2Gyで45-46Gyまで行い,その後は脊髄を照射野からはずしたboost照射野に縮小して計60〜70Gyまで行った。
 化学療法は5FU 250mg/m2・24時間持続静注+CDDP 3mg/m2点滴静注を照射日のみ連日併用し,5週間以上併用することとした。
 放射線治療の完遂率は94%(64/68),5FUおよびCDDPの完遂率はともに71%(48/68),治療期間は16〜83日(中央値51日)であった。追跡完遂率は99%(67/68)であり,生存例における最短観察期間は17ヶ月であった。

結   果
 overallの5生率は20%,cause specificの5生率は31%であった。StageではIIとIII・IVの間に有意差があり,T4/nonT4,N0/N1因子,およびCR/nonCRの間にもそれぞれ有意差を認めた。治療期間別50日以下と51日以上では有意差はなかった。
 有害事象は白血球減少が11例,貧血が1例,血小板減少が2例でいずれもGrade3であった。食道炎はGrade3が9例,Grade4が2例であった。その他食欲不振が20例,悪心嘔吐が4例,肝機能異常が3例であった。早期障害死は1例で,治療期間中の突然死であり,心臓のアクシデントと思われた。晩期障害死は3例で,心筋梗塞が1例,心拡大+胸水+心不全が2例であった。障害死4例のうち2例は75歳以上であり,75歳以上の症例6例中33%を占めた。
 再発様式は63例で検討しえた。再発は39例に認めた。照射野内再発を認める症例は29例(照射野内のみが21例,照射野内+照射野外が8例),照射野外再発のみが10例であった。照射野内のみの再発21例中,食道再発が20例を占めた。照射野外再発のみの10例中,隣接リンパ節領域のみの再発は1例だけであり,残りの9例は遠隔転移を伴っていた。

ま と め
 ・食道癌II期〜IV期(鎖骨上窩LNによる)68例に対するいわゆるlow-dose FP併用放射線治療の成績を報告した。
 ・5年累積生存率は20%,原病生存率は31%であった。
 ・II期,nonT4,N0,CRで成績がよかったが,治療期間と成績の間に関連は認められなかった。
 ・Grade4の血液毒性は認められず,非血液毒性は食道炎と食思不振が最も多かった。
 ・治療関連死は4例(早期障害死1,晩期障害死3)であった。75歳以上の高齢者では障害死の頻度が高かった。
 ・再発様式は局所再発を伴うものが多かった。一方,局所制御は得られたが再発した症例はほとんどが遠隔転移を伴っていた。