第四十回北日本放射線腫瘍学研究会記録 主題 「乳房温存療法の実態」,21-25
5) 乳房温存療法実態調査アンケート集計結果
札幌医科大学 放射線科
   永 倉 久 泰


 乳房温存療法の実態調査のため,本研究会の世話人30人(18施設)に電子メールまたは郵送にてアンケートを送り,12施設14人から回答が寄せられた。回収率は47%(14/30)であった。紙面の制約でここにはその結果を列挙するにとどめる(括弧内は回答人数)。

1. 施設別症例数の年次推移(下図)

2. 適  応
 1) T因子
  T2未満(1),腫瘍径3cm以下(4),T2以下(5),T4未満(1),部分切除可能例(1)
 2) 原発巣の占拠部位
  一側乳房に限局,単発性,乳頭に接しないもの,E領域以外,腫瘍乳頭間距離3cm以上(各1)
 3) N因子
  cN0(2),pN1b以下(3),N2以下(2),転移リンパ節3個以下(1)
 4) その他に適応を左右する因子
  温存希望例(4),浸潤癌(1)
 5) 適応外
  乳房内多発病変,広範な微細石灰化,E領域原発,乳頭温存不能,血性乳頭分泌物,炎症性乳癌,
  温存拒否,経過観察困難例,胸部照射の既往(各1)
 6) 乳房温存療法か否かの方針決定に放射線科医は関与しているか
  直接関与(1),画像診断を通しての間接的な関与(1),関与なし(10)

3. 体位・固定
 1) 治療時の体位
  仰臥位(13),腹臥位(0)
 2) 腹臥位にしない理由
  固定具がない(5),乳房や照射野の確認が困難(4),再現性に疑問(2),体位が不安定(2),
  慣例(2),経験がない(1),仰臥位で不自由ない(1),腹臥位なんて考えたこともない(1)
 3) 上肢
  両側とも挙上(7),患側のみ挙上(6)
 4) 固定具を用いているか
  使う(13),使わない(0)
 5) 固定具を用いる理由
  体位の再現性がよい(5),患側上肢の被曝回避(4),患者の姿勢保持が楽(4)
 6) ダラ〜ンとした巨大乳房に対する特別な固定法
  なし(9),テープで引っ張って留める(1),乾燥したタオルを脇にはさむ(1),斜位にする(1),
  脇につい立てを立てて押さえる(1)

4. 接線照射の照射野
 1) 標準的な照射野
  上縁:鎖骨骨頭下縁,下縁:乳房下ヒダより2cm尾側,内縁:胸骨正中線,外縁:中腋窩線,前縁:乳頭より1〜2cmのairgap,後縁:照射野に含まれる肺野の厚み2cm程度(紙面の制約で集約した結果のみ示す)
 2) CTVの設定
  乳房全体(11),乳腺組織(2)
 3) CTVを乳腺組織に絞らない理由
  乳腺組織の同定が困難(5),照射野やMLCの設定が煩雑(2),MLCを使用しても大差ない(1),乳腺組織に絞らなくても問題ない(1),治療範囲の縮小は疑問(1),ただの慣例(1)
 4) CTV設定にCTを用いているか
  使う(5),使わない(6),症例による(2)

5. 接線照射の方法
 1) 照射法
  180度対向二門照射(0),half field法(5),coplanar法(dorsal edge alignment method)(8)
 2) 180度対向二門照射を用いない理由
  肺の被曝が多い(5),アイソセンターが浅く再現性に疑問(1)
 3) half field法を用いない理由
  アイソセンターでの線量評価に疑問(2),線量評価点の設定が面倒(1),coplanar法より煩雑(1)
 4) coplanar法を用いる理由
  肺の被曝が減る(4),保険点数が高い(1),簡便(1),出身施設の方法を踏襲(1),変える理由もない(1)
 5) coplanar法を用いない理由
  アイソセンターが浅く再現性に疑問(2),照射野設定が煩雑(1)
 6) アイソセンターの設定
  二門の深さが同じになる点,5〜6cmの深さで二門の深さが同じになる点,2方向からの照射野中心での乳房の厚さの中点,照射ビーム中心の交点,照射野中心,half fieldの中心点,乳腺組織の中心,胸壁より5〜10mm前側,half fieldで設定できる点,乳房最深部,うまく説明できない,非公開希望(各1)
 7) 線質・エネルギー
  4MVX線(7),6MVX線(2)
 8) 線量・分割
  週4回照射の場合45Gy/18分割(1),50Gy/25分割(1),46Gy/23分割(1),週5回照射の場合50Gy/25分割(9),50.4Gy/28分割(1)
 9) ウェッジフィルター
  常に左右対称(9),分布次第では非対称(3)
10) 線量分布図を作成する範囲
  照射野全域(7),アイソセンターの面のみ(4)
11) 不均質補正
  行う(5),行わない(4)

6. 病期別プロトコル
 1) 断端への追加照射
  陽性で6Gy(1),陽性または近接で6Gy(1),陽性で10Gy(6),陽性または近接で10Gy(2),陽性で16Gy(1)(全て電子線)
 2) 鎖骨上リンパ節照射
  なし(5),pN(+)(1),n1&beta:以上(2),pN2(1),リンパ節転移多数(2),level V陽性(1),適応の説明は困難(1)
 3) 傍胸骨リンパ節照射
  なし(6),外科にはかけたと言っておく(2),リンパ節転移多い場合接線照射(1),リンパ節転移陽性で術者が気にしている場合接線照射で(1),AまたはB領域原発でリンパ節転移多い場合接線照射で(1),AまたはB領域原発でN1以上(1),画像上腫大ある場合(1)
 4) 例外措置
  膠原病合併なら45Gy/25分割/5週に減量(1),Extended intraductal spreadで腫瘍床に10Gy追加(1)
 5) 極薄乳房に電子線を用いたことがあるか
  はい(3),いいえ(10)

7. 副 作 用
 1) 放射線皮膚炎(写真の印象)
    △:50Gy/25分割(週5回)
    □:50Gy/25分割(週4回)
    ○:50.4Gy/28分割(週5回)
    ◎:46Gy/23分割(週4回)
 どの様な線量・分割を用いる回答者が,この写真にどの様な印象を持つか?
  横向きのグラフにすると
     :これ程弱い皮膚炎は未だかつて経験したこと
      がない
     :これ程弱い皮膚炎は稀にしか経験しない
     :普通よりかなり弱い
    ×:普通よりは弱い
 △△○×:普通はこの程度
  △△×:普通よりは強い
△△△△◎:普通よりかなり強い
  △△□:これ程強い皮膚炎は稀にしか経験しない
     :これ程強い皮膚炎は未だかつて経験したこと
      がない
という結果を得た。
 2) 放射線肺線維症
  a. 画像上は肺線維症を認めるが無症状で治療を要しないもの
    100%(1),70%(1),60%(1),30%(1),20%(2),10%(2),稀(3)
  b. 呼吸器症状を呈し薬物療法を要したもの
    2〜3%(1),1〜2%(1),1%(3),1%未満(4),稀(3),なし(1)
  c. 酸素吸入を要したもの
    1%(1),1%未満(2),0.1%(2),なし(8)
  d. 死に至ったもの
    0.1%未満(1),稀(1),なし(11)