第四十回北日本放射線腫瘍学研究会記録 主題 「乳房温存療法の実態」,15-18
3) 当センターにおける乳房温存療法
宮城県立がんセンター 放射線科
   坂谷内   徹・後 藤 卓 美
   角 藤 芳 久
   


 当センターは仙台市の南隣,名取市に位置する病床数383床の病院であり,そのうち16床が放射線科に割り当てられている。放射線科治療部門では,常勤の放射線治療医が3名で,その他技師4名,看護婦が0.5名程度の配置となっている。治療装置としてリニアックが2台配置されている。
 当センター外科における乳房温存術の状況についてであるが,手術件数は平成12年が21件,13年が10件,14年が28件,15年1〜4月で9件であった。当センターでは乳腺専門の外科医が一昨年まで不在だったため,手術件数は決して多いとはいえない状況である。乳房温存術の適応は,現時点では乳がん学会の基準を遵守しているとのことである。
 温存術後の放射線療法についてである。照射実施件数は他院からの紹介患者も含め,平成12年が20件,13年が11件,14年が40件であった。
 放射線療法は1日1回2Gy,週5回法で実施している。最近は5月の連休や年末年始などの比較的休日が連続する期間において,休日照射を行っている施設も散見されるが,我々の施設では休日照射は一切実施していない。
 照射野はwhole breast fieldにて総線量50Gy-25分割を標準としている。当センターにおけるリニアックの性能上,乳房の大きさ・形などにかかわらず加速電圧4MVのX線を用いる場合が大部分である。切除断端が陽性と判明している場合は,上記50Gyの照射に続き,電子線9〜15MeVによる追加照射10Gy-5分割を実施している。最近は再発率の観点から,乳房温存療法における至適線量はこれよりも多いのではないかという議論が見受けられるが,当センターでは上記のような照射線量となっている。
 照射野については,以下の如き手順にて設定している。まず当センターにおいては,X線シミュレータを用いて計画する場合が大部分を占めている。固定具はアームサポートと呼ばれる枕(図1)を使用することが一般的であるが,手術の影響等により上肢の挙上が不十分な場合は,体位の設定がより広い範囲で可能なブレストボード(図2)を使用している。体位設定後,胸骨正中線および患側の中腋窩線に透視時の目印となる金属線を貼付する。これを参照として,ガントリー角度に175度の差を持たせた非対向二門照射を行っている。照射野に肺の含まれる範囲を極力減らすため,対向二門照射は行わず,また,線量計算点の問題やリニアックの性能上の制限などにより,当センターでは,いわゆるハーフビーム法は使用していない。ウェッジフィルターは乳房の大きさ・形等には関係なく,一律に30度を用いている。標準的な照射野のサイズは8×20cmとなっている(図3)。

図1.

図2.

図3.

 腋窩リンパ節や反対側の内胸リンパ節を照射野に含める必要のある場合等においては,治療計画CTを用いているが,症例数は少ない。治療計画装置はFOCUSを使用している(図4)。
 当センターでの放射線皮膚炎について,2例ほど症例を提示する。1例目は当センターで一般的な程度と考えられる放射線皮膚炎の症例である。30Gyで写真(図5)に示す程度の皮膚炎が認められている。40Gyになると,やや発赤が進行しているものの,びらん・潰瘍までには発展していない(図6)。
 2例目(図7)も30Gyとしては比較的よく見られる程度の放射線皮膚炎であるが,腋窩部分はやや症状が強く認められている。40Gyでは,腋窩皮膚の炎症反応がさらに進行している(図8)。

図4.

図5.

図6.

図7.

図8.

 当センターにおける乳房温存療法について報告した。