第三十九回北日本放射線腫瘍学研究会記録 主題 「三次元原体照射の実態」,19-21

4)  当院の原体照射の現状と今後の展望

 
秋田大学医学部放射線医学講座
   安 倍   明,泉   純 一
   西 井 俊 晶,渡 会 二 郎

 秋田大学付属病院にて1995年から2001年まで行われた原体照射について検討したので報告する。当院の原体照射施行例を表1に示す。年間1〜4例で推移しているが,その内訳は頭頚部癌が5例,脳腫瘍が5例,子宮癌が6例,前立腺癌が2例であった。
 同時期に行われた定位脳照射を除いた外照射放射線治療の患者数が年間約190〜280例であるので,当院では原体照射の比率はかなり低い。
 疾患別の原体照射の実態をみると頭頚部癌は表2に示すごとく,上顎洞癌が2例,上咽頭癌が3例であった。
 婦人科癌は子宮頚癌が5例,子宮体癌1例に原体照射が施行されていた(表3)。
 脳腫瘍では転移性脳腫瘍が3例,gliomaが1例,glioblastomaが1例であった(表4)。2000年度に定位脳照射治療システムが導入され,脳腫瘍については定位脳照射による照射例が増加し,治療ビームが同一軌道を回転する原体照射例はそれほど多くはない。
 また,泌尿器癌は前立腺癌が2例であった。
 当院の原体照射は表2から4に示したごとく,進行例や再発症例のboostとして行われることが多く原体照射のみで治療された例は転移性脳腫瘍のみであった。
 1996年度に3次元治療計画装置FOCUSが導入され,原体照射の治療計画は容易となったが,実施例は前述のごとく大きな推移はみられなかった。
 その要因として,脳腫瘍では脳外科の要望もあり定位脳照射に治療方針がshiftしてきており原体照射例が減少していること,頭頚部癌では術前照射から手術という例が多いこと,また子宮癌や前立腺癌などの新鮮照射例の絶対数が当院では減少傾向にあることなどがあげられる。
 IMRTはまだ導入されていないのでconformityを高める治療として原体照射の果たす役割はまだまだあると思われるが,上記のような要因で当院のでは原体照射の比率は低く今後の検討課題としたい。


表1. 1995年度から2001年度までの原体照射施行数
表1. 1995年度から2001年度までの原体照射施行数

表2. 頭頚部癌症例
表2. 頭頚部癌症例

表3. 脳腫瘍症例
表3. 脳腫瘍症例

表4. 子宮癌症例
表4. 子宮癌症例