第三十九回北日本放射線腫瘍学研究会記録 主題 「三次元原体照射の実態」,17-18

3)  当施設における原体運動照射の実際

 
弘前大学・放射線科
   近 藤 英 宏,森 本 公 平
   場 崎   潔,青 木 昌 彦
   阿 部 由 直
青森県中・放
   渡 辺 定 雄,甲 藤 敬 一
   眞里谷   靖
八戸市民・放
   松 倉 弘 明

 当院では三菱製ライナック (EXL-20TP) 二台を新規に導入し,2001年10月より運用を開始した。今回は,新規ライナック導入より一年間(2001年10月から2002年9月まで)の,当院で行われた三次元原体運動照射の概要について報告する。なお,放射線治療計画装置はFOCUS Ver. 3.01を用いた。
 放射線治療総件数701件中,三次元原体運動照射が行われたのは21件 (約3%) であった。対象疾患の内訳は,原発性脳腫瘍 (2),転移性脳腫瘍 (2),前立腺癌 (8),直腸・結腸癌 (5),膀胱癌 (2)で,姑息的照射は原発性脳腫瘍を除く16件 (76%) であった。
 部位別に当院での原体運動照射放射線治療の治療方針・特徴について示す。
 CNS lymphomaを除く原発性腫瘍の場合,放射線治療は術後に行われる。Glioblastomaには,術前MRIを参考にして,原発腫瘍+周囲浮腫に2cmのマージンをとりPTVとし,60Gy/20分割の原体運動照射を行う。Meningiomaには腫瘍床より1cmマージンをとりPTVとし,50-60Gy(2Gy分割)の照射を行う。CNS lymphomaには全脳照射施行後,局所腫瘍辺縁より2cmマージンをとりPTVとし,14-20 Gyの照射を追加する。
 転移性脳腫瘍の場合,転移巣3個以下の場合,個々に対し原体運動照射を行う。転移巣に1cmのマージンをとりPTVとし20Gy-30Gy (5-10分割) の原体運動照射を行う。再増大の場合,20Gy/4分割を追加する。なお非小細胞性肺癌の転移巣の場合,30Gy/5分割 (隔日),小細胞性肺癌の場合20Gy/4分割としている。転移巣4個以上の場合,全脳照射30Gy/10分割を施行する。
 直腸・結腸癌においては,当院では術後再発か,手術非適応の症例がほとんどである。PTVは原発・再発腫瘍から1cmのマージンを取り,50-60Gy/25-30分割照射する。骨盤内リンパ節を極力含まない。大腿骨頭頸部に20Gy以上照射される場合は,前後対向,三門照射等組み合わせている。
 当院の前立腺癌治療の特徴は,まず外科的切除はほとんど行なわれていないことである。ホルモン療法・化学療法にて制御不能となった症例に対し放射線治療依頼となるケースが多く,また殆どがM1症例であるため,姑息的照射が中心となる。PTV は原発巣 + 精嚢から1.5cmのマージンをとり,姑息的照射は50-60Gy,根治的照射の場合70Gyの治療を行う。直腸線量を減らすため,殆どが振り子照射を用いており,全骨盤照射の併用は行わない。
 参考として前ライナック,1987〜2001年9月までに行われた原体運動照射について報告する。資料が古い点もあるため,件数ではなく人数で計算した。原体運動照射が行われたのは全治療人数3,871人中,339人(8.9%),また姑息的照射は144人(42.9%)であった。過去には原体運動照射を根治照射のboostとして施行する症例が多く,特に子宮頸癌,上咽頭癌のboostとして多く用いられていた。現在両者に対し原体運動照射が殆ど行われなくなった原因としては,上咽頭癌では,外照射における治療精度の上昇や,chemo-radiationの発達がその原因と考えられるが,子宮頸癌に関しては,単に産婦人科からの紹介が激減したことによる。その他,胸腔内腫瘍・食道癌や肺癌へのboostとして用いられていた症例があったが,現在では同部への原体運動照射は行っていない。
 結語として,最近の原体運動照射を用いる症例は,頭部や骨盤内腫瘍への姑息的照射として用いられることが多い,比較的限局性の腫瘍を対象とする,そして原体運動照射自体は減少傾向にあることである。
 なお当院にては,固定照射にはほぼ全例三次元原体照射を用いている。