第三十六回北日本放射線腫瘍学研究会 主題 「IMRT」,18-19

3) 北海道大学でのforward planningを用いたintensity
  modulated radiotherapy (IMRT)
  「Three dimensional conformal radiotherapy (3D-CRT)に
  限界を感じたときに,何ができるか」

 

北海道大学大学院医学研究科高次診断治療学専攻病態情報学講座放射線医学分野
   喜多村   圭・土 屋 和 彦
   西 岡   健・白 土 博 樹
   鬼 丸 力 也・青 山 英 史
   西 岡 井 子・宮 坂 和 男
 

はじめに
 まず,IMRTの定義ですが,広義では,1つのfieldが2つ以上のsub-fieldで作られるもので,simple IMRTと呼ばれ,forward planningも可能です。狭義ではみなさんが一般に理解されているように,dynamic MLCと最適化アルゴリズムを備え,inverse planningが可能なものです。我々がIMRTを開始した2年前には少なくとも日本国内ではgeneral IMRTを行える施設はなく,北大ではforward planningによるsimple IMRTを採用し現在まで臨床に使用しています。


北大でのIMRTの実際
 北大では現在三次元治療計画装置FOCUSにinverse planning可能なソフトウエアがインストールされておりますが,現在臨床使用に向けて調整中です。そこで,2年前より開始しているforward planningでstep and shoot methodにより行っています。4-7方向から6-13門を使用して,いくつかのfieldが2 segmentを持ちます。動体追跡放射線治療装置を併用する場合は0-5 mmの範囲でPTV marginを設定し,併用しない場合は5 mm以上のmarginをとります。線量制約基準は疾患毎に決めています。
 北大で臨床的にIMRTを行っているのは,3D-CRTで限界を感じる以下の3種類の疾患群です。唾液腺障害・急性期粘膜反応を低下させたい頭頸部腫瘍,脊髄を許容線量内で腫瘍を根治したい傍脊髄腫瘍,晩期直腸出血をなくしつつ線量増加を図りたい前立腺癌の3つです。頭頸部腫瘍に対しては,PET/CT/MRI fusion画像を治療計画に用いて標的容積の縮小化に努め,その上でIMRTによりさらに被照射容積の減量を行っている。傍脊髄腫瘍,前立腺癌に対しては動体追跡放射線治療装置Real-time tumor-tracking radiation therapy (RTRT)を併用して,setup error/organ motionなどの不確定要素を可能な限り除去することで,究極の位置精度を追求し高精度のIMRTを実現している。


Forward planned IMRTの問題点
 まず,isocenterを遮蔽した照射野を設定する場合には,線量指示には当然要注意です。また,複雑な線量制約が必要な場合,特に3段階以上の強度変調は人間の能力・時間的にも困難です。そのような場合にはinverse planningが必要です。次にinverse IMRTにも共通の問題ですが,照射野内の大半をmultileaf collimator (MLC)で遮蔽するような場合,放射線の物理的特性・精度は本当に補正されているのか疑問を感じます。特にMLCを通過する透過線量およびMLCの間からの漏洩線量がどう処理されているかによって,かなり大きな影響を受けると考えられます。また,IMRTは治療計画位置に腫瘍が存在していることを前提とした治療ですので,setup error, organ motionなどの位置精度の補正に関しては全く無力で,急峻な線量勾配を意図的に形成するが故に却って有害事象を増やす可能性も考えられます。


Forward planned IMRTの利点
 まずは高い費用対効果があげられます。従来の三次元治療計画装置とMLCを装備した直線加速器のみで可能であり,新たな設備投資は全く不要です。治療時間をむやみに延長せず,患者のスループットが良好です。次に高い安全性ですが,inverse planningと比べてQAが容易で,脳で考えることができるので,inverseで何をしてるかわからない照射より安全と言えます。最後に最も大切な高い拡張性を強調します。RTRTなどの同期照射との組み合わせ自由自在で,これはinverse IMRTにはかなり困難な課題になると考えます。