宇宙航空環境医学 Vol. 62, No. 1, 22 2025
一般演題I
6. 模擬微小重力環境で培養したラット骨髄由来細胞の代謝活性の変化について
平野 光起1,2,川口 美須津1,吉田 幸弘3,伊藤 由有希2,河合 遼子2,3,吉田 和加2,3,
杉田 好彦2,3,久保 勝俊2,3,宮澤 健1,3,前田 初彦2,3
1愛知学院大学歯学部歯科矯正学講座
2愛知学院大学歯学部口腔病理学・歯科法医学講座
3愛知学院大学大学院歯学研究科未来口腔医療研究センター
Metabolic Activity of Rat Bone Marrow Cells Cultured in Simulated Microgravity
Koki Hirano1,2, Misuzu Kawaguchi1, Yukihiro Yosida3, Yuki Ito2, Ryoko Kawai2,3, Waka Yoshida2,3,
Yoshihiko Sugita2,3, Katsutoshi Kubo2,3, Ken Miyazawa1,3, Hatsuhiko Maeda2,3
1Department of Orthodontics
2Department of Oral Pathology / Forensic Dentistry, Aichi Gakuin University School of Dentistry
3Research Institute of Advanced Oral Science, Aichi Gakuin University
【目的】近年,宇宙旅行に関する話題が取り上げられることが多くなり宇宙に関する注目が高まっているが,その環境の変化が生体に与える影響については未知な部分が多い。これまでに様々な組織への影響が報告されている中で,模擬微小重力環境では骨組織の形成が抑制されることが報告されているが,その詳細については不明な点が多い。そこで本研究では模擬微小重力環境下でラット骨髄由来細胞を培養し,模擬微小重力環境が細胞の代謝活性に与える影響について検討した。
【方法】本実験ではラット大腿骨から骨髄細胞を採取して実験に用いた。骨髄由来細胞を骨芽細胞分化誘導培地で培養し,2回継代した後に実験に用いた。T12.5フラスコ内に細胞を播種した24時間後,細胞がフラスコの底面に接着したことを確認して実験を開始した。模擬微小重力環境(10-3G)の再現には模擬微小重力環境細胞培養装置(Zeromo®(CL-1000) ヤマト科学,東京)を用いた。模擬微小重力環境下で3時間,6時間,24時間の培養を行った後にCell Counting Kit-8(富士フィルム和光純薬,大阪)を用い,ELISA法で吸光度を計測して細胞の代謝活性を検討した。対照群ではフラスコの底面で細胞培養を行った。
【結果】本実験で用いている骨芽細胞様細胞は培養48時間後で細胞増殖を認めるが,培養24時間までに細胞代謝活性が増加していると考えられる。本実験での模擬微小重力環境下における細胞代謝活性は対照群と比較して3時間後では有意に高く,6時間後,24時間後では有意に低くなっていた。
【結論】本実験での培養環境において,模擬微小重力環境下での骨髄由来細胞の代謝活性は培養初期には高かったが,その後,細胞代謝活性は低下することが明らかとなった。このことから,模擬微小重力環境は細胞の代謝活性の変化を通じて骨芽細胞による骨形成に何らかの影響を与えることが示唆された。