宇宙航空環境医学 Vol. 62, No. 1, 14 2025

シンポジウム3

ポストISS時代の宇宙飛行士健康管理

ポストISS時代の宇宙飛行における健康管理
~JAXA宇宙飛行士の医学運用から考える~

速水 聰

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 有人宇宙技術部門宇宙飛行士運用技術ユニット 宇宙飛行士健康管理グループ

Medical Operations of spaceflight mission in the post-ISS era:Considerations from the perspective of medical operations for JAXA astronauts

Satoshi Hayamizu

Japan Aerospace Exploration Agency Human Spaceflight Technology Directorate Astronaut Operations and Technology Unit Astronaut Medical Operations Group

2030年の国際宇宙ステーション(以下ISS)運用終了以降,各国の宇宙機関における有人宇宙活動は月以遠の宇宙探査と,地球低軌道(以下LEO)での活動の二軸となることが予想される。日本政府のISS・国際宇宙探査小委員会では,民間利用,国としての技術開発利用,科学研究利用を中心に,LEOにおける日本の利用活動やプレゼンスを維持すること,民間と対話しつつ,2030年代の民間主体の形態にシームレスに移行することが必要としている。
 その具体的なあり方については未確定の部分が大きいものの,特にLEOでの活動においては最大限の民間リソース活用が期待されることは必至である。そしてJAXAが利用サービスを調達する1ユーザとなった場合,軌道上実験運用においてJAXA宇宙飛行士が担当する必要性は必ずしも高くない可能性もある。その際にLEOで活動する民間宇宙飛行士の健康管理については,従来の職業宇宙飛行士の健康管理のあり方が大いに参考となると考えられる一方で,少しずつ変化していく可能性もある。また宇宙旅行者の健康管理についても同様である。本演題では,ISSに長期滞在したJAXA宇宙飛行士の健康管理における基本的な考え方や職業宇宙飛行士の医学運用から獲得した技術・経験に触れつつ,LEOでの活動の展望を予防医学の観点から考察する。